教育研究所ARCS

今の時代男の子が生き生きできない理由

教育・子育て

小さな“やんちゃ”の応援者は誰?

男の子を持つお母さんと話していると、よく「男の子はわからない」とタメ息まじりに嘆くのを耳にします。

「男の子が考えていることはわからない」
「ウチの子何も話さなくて…」
そう仰るお母さんが多いのです。

そもそも男の子は育てにくいということについては、私も以前のブログなどで何度かお話ししているので(「母親の知らない思春期男子」「今の時代、男の子には生きづらい?」)今回は少し違う角度から述べてみたいと思います。

まず一つは社会の風潮という観点。そしてその「風潮」が及ぼす母と息子のあり方について考えてみたいと思います。

今の社会は男が育ちにくい

今の社会は、割り切った言い方をすれば男性が男性らしさを発揮しにくい時代といえます。
少し難しい言い方をすると、男が本来持っている潜在的男性らしさを伸び伸び発揮することを社会が容認しなくなりつつあるということです。

私の言う「男性らしさ」とは、アクティブな行動力や良い意味での闘争心。目先の利益よりも総体としての視野の広さ、未知なるものへの好奇心や危険を顧みない冒険(探求)心などを指します。
いずれも社会の進歩、文明の発展に欠かせない要素です。
これには異論はないと思います。

しかしその反面「男性らしさ」にはマイナス部分もあります。

たとえば、行動が直線的で大雑把すぎる点などは女性から見るとデリカシーに欠けるように見え、また目の前のことやすべきことを見落とす注意散漫も気になるところでしょう。

またアクティブな行動姿勢が一歩間違えると荒々しさや猪突猛進になったり、暴力的な形で表しやすいこともあります。

そしてここで注意しなければならないのは、この「男性性(男らしさ)」の長所と短所はコインの表と裏と一緒で切り離せないということです。

今の社会的風潮では、この男性性の欠点はこれまで以上に厳しく咎められる傾向があります。

今の時代を解くキーワードは「優しさ」「安全」「平和」「平等」であり、そのこと自体は全く悪いことではありません。
日本の社会が洗練されてきた証拠だとも言えます。
ただ、これらのキーワードからわかることは、現代がきわめて女性性優位の時代だということです。
結果として「優しさ」「安全」さらに「清潔」などを過度に追い求め、かえって社会全体のバランスを崩しているのではないかと感じています。

たとえば優しいことを強調するあまり、男の子が少しでも乱暴なふるまいをしたら母親は過度に咎める傾向にあります。我が子が少しでも冒険心や探求心を発揮しようものなら「危ないから」と言って止めてしまうのです。

つまり「女性性優位」の時代においては「男性らしさ」は欠点として映るということです。
男が伸び伸びと自分の内なる男性性を発揮することが、何かためらわれるような雰囲気なのです。

女性性優位の時代における母子関係

女性性優位の現代において、女性である母親が「優しさ」や「安全」を我が子に求めることは自然なことです。
問題があるとすれば、母親たちがそれらの価値観を当然のこととして全く疑っていないことにあります。

「優しい子に育って欲しい」
「人の気持ちがわかる子になって欲しい」
「危険なふるまいをする子にならないで」

これのどこが悪いのか。親なら当然の願いではないか。

同感です。私も我が子にそうなるよう願っています。

しかし母親は次のことを自分に問わなければなりません。

優しい人間になるためには「優しくなりなさい」と言えばいいのか。

安全な道を歩むためには「危険」をやめさせればよいのか。

優しさを知るためには、まず「優しくないこと」が何なのかを理解することから始まります。
「安全であることの価値(素晴らしさ)」を知るためには「安全ではないこと」の意味を知らなければなりません。

 

形ばかりの優しさは必要ない

男の子の少し乱暴で粗野な(と思える)ふるまいは男性性という原理からとらえると自然な行動であること。
しかし、女性原理優勢の時代では母親からすると、これは正すべき「いけない行為」と見え、社会的にも許されないことだと過度に反応してしまう点にあります。

だから
「幼稚園で他の子を突き飛ばして泣かせた」
「公園の砂場で他の子に砂をかけて泣かせた」
といったことが起こったとき、母親は周囲のママたちにペコペコ謝って歩くハメになります。

あげく「ウチの子はおかしいのではないか」などと悩みます、我々から見れば単に活発なだけなのに母親は「個人的な問題」と思い込んでしまうわけです。

そして安全性ばかり求める時代は社会そのものが不寛容になる傾向があります。
つまり自分たちの「安全」を脅かすと思えるものをできるだけ排除しようとしがちになるのです。

今は、学校もささいなことで子どもたちの「問題行動」を許さない姿勢に変わりつつあります。

最近よく聞くのは、ちょっとした男の子同士のケンカ騒ぎでも親が学校に呼び出されたり、高校生でも軽い校則違反なのに停学処分にしてしまうことです。ひと昔前なら考えられないことです。

子どもの「教育の場」である学校でさえそうなのだから、社会全体として「レールから外れる」ことへの締め付けは厳しいのが現状です。

結果として形ばかりの「優しさ」「行儀良さ」がはびこって、内実は血の通わない計算高さや他者への無関心があふれているように見えます。

だから本当の意味での人間的な心の交流も成り立たず、多くの人が空しさを抱えているのではないでしょうか。

男性原理と女性原理のバランスが大事

私は女性原理優位な今の時代が悪いとは言っているのではありません。
また、かつてのように「男らしさ」を誇示することが良いと思っているわけでもありません。
シンプルな言い方ですが、男性性と女性性のバランスこそが大切ではないかと思っているだけです。

ただ、優しさや安全などの「女性原理」を表面的に押し付ける今の風潮は、女性である母親自身の手かせ足かせにもなり、男の子が健全に成長する上での自然な男性性の発達─探究心やチャレンジ精神、未知への冒険心─を阻害しているのではないかと言いたいのです。今は「キバ」を抜かれた男性の大量生産の時代です。

安全も同じ。危険はイヤだと叫べば安全になるのでしょうか。レールを踏み外した人間に「落伍者」「危険人物」というレッテルを貼って排除すれば安全な社会が出来上がるのでしょうか。

元来、人間は好奇心のおもむくまま自由に探索する行動を通じて時には危険な目にあいながらも、勇気をもって前進していくことで科学も学問も社会そのものも進化するのではないでしょうか。

その過程で挫折したり、自分の弱さを思い知らされたり、負ける悔しさを経験することで人も社会も成長し、そのような「危険」もあるからこそ安全でいることの尊さも身にしみるのではないでしょうか。

こうして考えれば、男性原理は男性にだけあるものではなく、女性の生き方にも必要な要素であることに気づきます。男性にも女性性があるのと同様、女性の中にも男性性はあります。

だからどちらかだけを否定したり、どちらかを優位に置きすぎることは社会の健全性を損なうものだとわかります。

最後に

男の子を持つお母さんたちにお願いしたいことは、息子に男性的な要素─それは欠点としてみえることが多い─を発見したら、咎めたり正したりするのではなく、それこそ優しく見守って欲しいということです。

もちろん「しつけレベル」のことはやらなければなりません。
それでも息子の興味関心をひくものについて共に考え調べたり、ワケのわからない言動に対してもヤンチャな行動に対しても、大らかな気持ちでいて下さい。

男の子は実は女の子以上に傷つきやすく、母親の気持ちにも敏感です。すぐに自信を失いがちで、いったん失った自信は容易には回復しません。男の子は女の子以上に励ますことが必要です。

何といっても男は女性の励ましに弱い(笑)。
男の子をノセるのは簡単なのです。

他人の目や社会の圧力にめげることなく息子を伸び伸びと育てること。

お母さんにしかできないことです。

どうかお母さん、安全ばかり求めず男の子には色々なことにチャレンジする意欲を持てるように背中を押してあげて下さい。

大丈夫です。あなたの息子はちゃんと立派な男になります。

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