教育研究所ARCS

夢をもつことの大切さ~その本当の理由~

教育・子育て

若者が将来に夢や希望をもつこと。これは実はとても大切なことだと感じています。

夢や希望が人生を切り拓く原動力となるからだけではなく、どんな夢や希望をもつかによってその人の「生き方」の方向性が決まるからです。
夢というと現実ばなれした気がするなら、単に「やりたいこと」「興味関心のあること」と言い換えても良いかもしれません。

やりたいこと、興味関心のあることは自分の才能のありかを示しています。自分に向いているからこそ「やってみたい」「面白そう」と感じるわけで、元々自分の中に「芽」のないものは関心にさえ上がってこないからです。

ただし、ここで重要なのは「夢」は必ずしも具体的な将来像すなわち職業とか職種、役割に限らなくてもよいということです。具体的すぎる望みはそれ自体「制限」になることがあるからです。

私は高校生とか大学生など若い人たちから将来(進路)の相談を受けるときがありますが、こんな展開になります。
たとえば「将来カメラマンになりたい」という若者がいたとします。
たいていは「どうしたらなれるか」「そのために今やるべきことは」「どんな学校に行けばよいか」を知りたがります。方法ですね。

そんなとき私は「そもそもなぜカメラマンか?」を問うことにしています。さらにカメラマンになって何を達成したいのかをじっくり考えてもらいます。本質を問うわけです。すると他人の笑顔とか仕草とか、その人のいちばん美しい瞬間を撮りたい、あるいは風景の美しい姿を写真にしたいからなどと答えます。
そこから私は彼(女)の本当の願いは「人間の美を記録したい」あるいは「美の定着」「美の創造」と受け取ります。

このように少し抽象度を上げてみれば「本当の望み」が分かります。ならばカメラマンでなくてもよいわけで、自分が「美の創造者」と自覚できればスタイリストでも美容関係でも、映画や舞台の美術監督でも構わないかも知れません。
このようにカメラマンに限定せず芸術系一般を視野に置くことで将来の選択肢は広がります。相談者も「なるほど」と目からウロコになるようです。

同じく「ミュージシャンになりたい」も出発点は歌が好きだったり、あこがれの音楽家だったりであっても「音楽一般」に視野を広げればよいのです。
結果的に楽器店の経営に落ち着いたとしても彼(女)の人生は「音楽に触れること」が真の望みだったという意味では夢が実現したといえます。

だから次のように言うことができます。

望みの抽象度を上げる

親や教師が子どもの「夢」をバックアップしたいと考えているのなら、子どもの興味や関心、やりたいことの理由を掘り下げてみること。そしてその望みの抽象度を上げるよう導くことです。

抽象度を上げることの利点は単に職業選択の幅が広がることに止まりません。今この瞬間の勉強の大切さを同時に教えることになるからです。

先の例でいえば、カメラマンになりたい→美の創造者でありたい→芸術一般を知りたいとなり、そうであるなら写真の歴史などから入り絵画などにも関心が移るかも知れません。すると肖像画や写実主義の絵がカメラの登場によって衰退する歴史を知るかもしれません。

このように関心が芸術一般に向き出すと、高校生くらいになると芸術論などの文献や資料も読めるようになるでしょう。
そうなるとカメラマンになりたいから写真の専門学校へ行くという、やや狭い(限定された)進路を超えて人間の「高度な知的所産としての芸術」そのものへと関心がレベルアップします。

ちょっと話は外れますが、国立(難関)大学の入試問題などでは絵画論などの芸術論が盛んに出題されます。学校や塾などではあまり教わらない系統立った芸術(絵画)の歴史を、上のような子は自然と学んでいることが多く彼らにとっては当然ながら難解といわれる「芸術論問題」も苦になりません。

同じことは「科学好き」の子にもあてはまります。

男の子には「宇宙の話」が好きな子が多く、私もそのような科学少年にたくさん接した覚えがありますが、このような子には「ブルーバックス」や「ニュートン」を読むよう勧めてきました。(実際読んでいる子も多いが・・・)
彼らも高校生くらいになると、宇宙の成り立ち(歴史)から現在の問題すなわち宇宙(マクロ世界)を理解するためには、量子力学(ミクロ世界)などの知識が必要なことを理解し、興味が物理や数学へと広がっていきます。ここでも視野が拡大し能力そのものもレベルアップします。宇宙(天文学)から自然科学一般への興味へ・・・です。
結果として科学的知識が増え科学的思考力も身につきます。当然、学力アップにもつながるでしょう。

しかしこれら(知識が増えること)は結果であって目的ではありません。

あくまで自らの興味関心そして夢を純粋に追うことそのものが貴重な学びの体験となり、結果として「学力アップ」もあるということです。
ここは間違えないで下さい。大事なことは夢を追うためには「いま幅広く勉強することの大切さ」を知ることにあります。

魂の声を聞け

結論をいうと、親や教師は子どもの夢ややりたいことを問うことで子どもの「魂の願い」を浮きぼりにすること。これが大事だということです。

カメラマンになりたい。ミュージシャンになりたい。これらも美を創造したい、人生を芸術的に見たいという子どもの「本質(魂)」から出たことばと考えるべきです。

「カメラマン」「ミュージシャン」「宇宙が好き」というのは子どもたちの表面的な欲求表現でしかありません。その奥にある興味関心をつくり出している「魂」の声こそを聞いてあげることです。

親はとかく「ミュージシャンなんてダメだ。もっと地に足をつけて今は5教科の勉強が大事だ」などと言います。
こうして魂の声を聞いてもらえない子はどうなるか。夢を早々とあきらめ、好きでもない学部を選び好きでもないしかし安定した「大きな」会社に入り本当の人生はこんなものではないと思いながら一生を過ごすことになりかねないのです。

だから頭ごなしに否定しないことです。子どもの夢を奪ってはいけません。
その夢を語る子どもの本質に気づきましょう。
魂の声を聞くことです。
そうすれば実は職業そのものは重要じゃないことが分かります。

先日知人からこんな話を聞きました。その知人の息子は武道(格闘技)を習っていて、将来その武道の一流選手になりその後は子どもたちに武道を教えるのが夢とのこと。知人は武道などで食えるはずがないから心配だと言います。
そこで私はこう言いました。「息子さんは武道家そのものより本質としては指導者を目指しているのでは。つまりリーダーになりたいのが本当の望みだと思う。」

その子の本質的欲求(魂の望み)そのコンセプトは「教えること」「指導者になること」「リーダー」ではないかということです。それなら武道家になれなくても無数の選択肢があります。
サラリーマンになってプロジェクトリーダーになることもアリだし、教師やスポーツのコーチになるかもしれません。
それなら武道の技術だけでなく、人間の心理やスポーツ医学なども勉強しておいたほうが良いでしょう。歴史などから偉大なリーダー像を学ぶことも必要です。
そう伝えると知人は安心したようでした。

こうして子ども(若者)の夢をよくよく聞けば、子どもの本質が何を指向しているのかが見えてきます。その指向しているものの方向性を示してあげるのが周囲の大人の役割だと思います。
何を目指すにせよ自分を高める研鑽が必要であること。そのためにはいまどんな「勉強」をしたらよいかを示してあげることが、大人とくに親や教師の務めであると思います。

「実現」よりも大事なこと

くり返しになりますが子どもの夢(やりたいこと)を聞いて、抽象度を上げて本質的な望みに気づかせることはとても大切です。

自分は美の創造者である人生を芸術的に見る者である。あるいは科学的思考の名人であるリーダーである、などと名付けることで自分の特質を自覚できるからです。
あえてレッテルを貼ることで自分の特質を活かして生きることができます。

人生航路の地図を渡されたようなものです。
あるいは自分の使命に目覚めることになるからです。

たとえ普通のサラリーマンになろうが公務員であろうが、仕事という手段を通して自分の特性(独自性)を表現することで仕事そのものの質を上げることもできるでしょう。

たとえばプレゼンするとき、その段取りや使う資料、話す言葉や見せ方に至るすべてを芸術作品と捉えて進めるなら彼(女)は「美の表現者」となります。その仕事は創造的なものになるでしょう。何より仕事そのものが自己表現(実現)である故に、楽しみと充実感が伴うことになります。

そして仕事に限らず人生全般が充実と幸福に満ちたものとなるでしょう。
なぜなら己を知り独自の世界を切りひらいているからです。己の特性(使命)を活かす術をもっているからです。

そう考えると次のように言えるでしょう。
夢と現実は決して対立するものではない。
むしろ最初に夢を描くからこそ、その夢の中に「現実」が立ち表われてくるのだと。

だから夢そのものがナマの形で実現する必要さえないのです。むしろ大事なことは夢を追う過程で真の自分に気づき、その特性を伸ばすことで独自の世界を切りひらいていく道筋そのものにあります。

実現(結果)そのものよりもそのプロセスで身につけたもののほうが大事ということです。

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