子育てで大事なことは何ですかと問われることが多い。
これに対する答えはシンプルで、その子のもっている才能をできる限り伸ばすこと。それに尽きると思います。
では、どうやって才能を伸ばすのか。思いきりカンタンに言うと「才能」「能力」があることを認めることによってです。
才能とか能力は、人によってはっきり見えるものもあれば滞在していて見えにくいものもあります。
スポーツができるとか、絵がうまいとか勉強ができるとか、始めから高い能力を発揮する人もいますが、なかなか隠れていて見つけにくい人もいます。
「ウチの子なにも得意なモノがないんです」と悲しげに訴える親御さんもいますが、人間の能力はそう簡単に外側に出てくるとは限りません。
早熟の子もいれば晩成型の子もいます。
小中学生段階で突出した能力など発揮できない子のほうが普通なのです。
いや、むしろ他人より優れた才能を探している時点で、才能というものを特別視し過ぎています。
たとえば、何事にも時間をかけて丁ねいに行うということも立派な才能であり、その子の個性です。
そういう才能は地味なのであまり重要視しない親が多いのではないでしょうか。才能だと思っていない。しかしそれは立派な才能なのです。
世間が派手に騒ぐような能力、他者と比較して突出した才能を見い出せないからといって「ウチの子は大して能力がない」などと悲観すること自体子どもの潜在能力を見くびっています。
ですから最初に「才能があること」を認めることが大事と申し上げたのです。
どんな子(人)にも才能がある。独特のユニークさというものがある。まずその「存在」を認めることからスタートしなければならないと思います。
「ホメて育てる」は必ずしも善ではない
さて、子どもに限らず人を伸ばす、人を育てるというとき次にどんなことに気をつければ良いのか。
長所をホメて伸ばす!
そう考えている人が多いようです。しかしこの方法は、ホメられる人が自分の長所や才能に気づいていないときは有効ですが、普通は自分の長所に気づいているので他者からホメられても大きな喜びにはつながりません。
なぜなら「こうしたら伸びるだろう」「ホメたらヤル気を出してくれるのではないか」という目的意識をもって、つまりこちらの思い通りに相手を誘導しようという意図のもとにほめていることが伝わってしまうからです。
親が子をほめる、上司が部下をホメるとき往々にしてこの種の思惑、計算が裏にあることが多く、たとえ純粋に「伸ばしてあげたい」という思いからであっても長所をホメる行為は上から目線で評価を下すことになるのです。
確かにホメられると悪い気はしません。でも長所のみホメられるということは、逆に言えば欠点はダメだと言われていることに等しくいわば条件つきの「認証」を与えられたに過ぎず、かえって失敗を恐れる気持ちが増すことになりかねません。
先生にテストの成績をホメられた生徒たち(グループ)が、失敗を恐れてかえって難しい問題にチャレンジしなくなったという実例がアメリカの心理学の実験で報告されていますが、私も同じような経験をしています。
だから特定の分野(学力だとか才能、長所など)をホメることは、失敗(欠点)を責めるのと同じくらい効果的でないやり方だといえるでしょう。
肝心なことは、人が伸びるときすなわち成長するときは本人が自分を肯定的に見ることができているとき。つまり肯定的なセルフイメージをもてるかどうかがポイントになります。
自分を肯定的に見るとは、簡単にいえば自分で自分のことを好きでいるということです。
自分を好きということは、自分らしくあって良いのだと自分に許可をする感覚です。さらにいうなら自分のユニークさを知り認め、その個性を発揮すること。自分に十分に表現して生きていくことの喜びを常に感じ続けるということです。
人はこのような喜びの中で自分を拡大していくとき、その才能は始めて大きく開花していくものです。
だから人を伸ばそうと思うならこの観点から見ていく必要があります。
上から目線で長所をホメるのではなく、失敗させたくないと尻をたたくのでもなく、目標を与えて達成を目指すような誘導するのでもない。まして他人と比較してダメな部分を矯正するのでもなく競争心を煽り立てるのでもありません。
ただ相手を対等な存在と見立てて、その独自性そのユニークな人間に対して敬意と暖かな眼差しで接する。すなわち肯定的に接するという姿勢です。
自分の個性を輝かせて生きる
人は自分のもっている才能や個性を伸ばし、その才能や個性に見合った環境で生きていくときもっとも人生は輝き、幸せになると思います。
自分が自分らしく生きているとき、たとえ様々な困難があってもそれは苦ではなく乗り超えるべきチャンスに過ぎないと思えるからです。
特にこれからの時代、必要なのは何か特定の型にはまった生き方ではなく、単一の価値観に染まった生き方でもありません。
皆と同じようなやり方、考え方を身につけ同じように行動していけば満足が得られるということもありません。
多様な価値観、多様な生き方が共存していく時代にあって自分なりの生き方をしっかり身につけ、自らの独自性によって世の中にも貢献していく生き方が問われるでしょう。
だからこそ自分の独自性に気づいていることが必要なのです。自分のユニークな才能に気づきそれを伸展させることが社会貢献にもつながり幸福につながるのです。
決して外側の価値観に合わせて生きることではありません。それは自分以外のものになろうとすることで、それでは自分の内部にある豊かな自分だけの個性を押し殺すことになり、自分にとっても社会にとっても損失となります。
「自分らしくある。自分のユニークさを知り、それを輝かせて生きる。」
そうやって自分の個性を表現していくほど、それは必らず他者の役にも立つのです。
そのためには自分の欠点も含めて自分を肯定し認めていくこと。それが自分を大事にすることでもあります。
自分を大事にすることは自己中心的でエゴイスティックに生きることではありません。
自分が自分のために自分らしさを十全に表現していくと、すなわち自分を輝かせていくと必ず多くの人々にも恩恵を与えることになるからです。
長所と欠点は表裏一体
親や教師はどうしても世間の常識に照らして「良い」と思われる部分を評価しがちです。協調性があるとか、素直に従う、言われたことをきちんとやるなど、もっぱら「長所」にのみ注目し伸ばそうとする。
そのような性質が悪いわけではないが、一つ明確に理解しておくべきは、いわゆる長所というのは短所と表裏一体だということです。
コインの裏面と同じで切り離すことはできない。
たとえば協調性がなく自己主張が強すぎる子は、マイナスに見られがちですが別の角度から見れば独自の考えをもち、「問題発見」能力が優れているとも言えるわけです。
このように1人の人間の個性には長短同時に存在しているわけで、どちらかを失くそうとすれば両方ともが消失する可能性が高いのです。長所とか短所といってもそれは見方の相違にすぎません。
個性の強い人は、その両面もまた大きいのです。
私たちはむしろその個性そのものを伸ばしていくことだけを心がけ、マイナス面については本人が様々な経験の中で自己修正していけるよう信じるしかありません。
だからこそ、自己肯定感を身につけさせるべきなのです。
人は「ありのままの自己」を肯定できるときのみ、困難を乗り越える力を持つことができるからです。
その上で自らの個性に応じた生き方を創造していくことがその人の幸福につながるのです。
子育てで一番大切なこと。
それは、自分のユニークさを知りその独自性を十分表現することによって自ら幸せになり、他者や社会に献していくことを促すこと。
他者のために自分を犠牲にすることでもなく、何かのために「今」を我マンし、耐えることでもない。
私たちは「自分」という豊かな作品を創りあげる芸術家である。
このように考えて相手(子ども)の存在を肯定的に見ていくことが真に大切なことだと思います。
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