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望ましくない現実は変えようとしてはいけない

教育・子育て

望ましくない現実は変えようとしてはいけない

私たちは望ましくない状況を目にすると何とかその「現実」を変えようとします。

当たり前ですね。誰もが望まない状況の中にいたくないからです。
それを変えて少しでも理想の状態に近づけようとする。

しかし多くの場合この試みは失敗するようです。

勉強しない子どもを何とかしたい。
今ひとつ仕事にヤル気を見せないスタッフをどうにかしたい。
意地悪な上司を何とかしたい。
不都合な問題をどうにか解決したい。
好きなあの人を振り向かせたい。

こうして私たちはアレコレ努力します。

子どもに「勉強しないと入試に受からないよ。そしたら将来困るぞ。」と言い、それでもダメなら先生に相談したり罰を与えたり何とかヤル気を出させようとします。

意地悪上司に対しては「完璧に仕事を仕上げてグーの音も出ないようにしてやる」と決意しそれでもダメなら皆で文句を言いに行くとか、辞表を叩きつけて席をけるとか。

ダメな部下には、酒でも飲みながら話を聞いてコミュニケーションを図ったり、説教したり叱ったりなど…。

しかし結論から言うと、このように「問題そのもの」に対処するやり方はうまく行かないでしょう。たとえ一時的に改善しても長くは続かない。

なぜでしょう。

答えはシンプルで、問題というものはそれが「問題ごと」として目に見える形で顕在化した時点である意味最終的な到達点だからです。

「変えよう」とせず「変わる」ようにする

つまり「望ましくない出来事や状況が起こった」と私たちが認定した時点でそれは「現実」として固定されてしまった。固定された現実は変えようがない。それにアレコレ対処しても仕方がないということです。

ではどうするか。

まず第1に変えようとしないこと。これが大事です。
「エーっ、それじゃ何も変わらないままってこと?」
そうではなく、変えたい状況があるのなら変えようとするのではなく変わるようにするということです。

私たちが意思の力を使って「対象」を変えようとすればその不都合な現実はますます強固なものになってしまいます。

そもそも望ましくない状況とは、私たちにとって不都合である、嫌なモノであると認定したわけでそれを望ましいものにしたいということは、自分に都合のよいものに変えたいという、いわばエゴの働きです。

エゴを行使すればエゴが返ってくる。敵と見なして攻撃すれば敵はますます強くなる。状況を「問題」と見なせばそれはますます「やっかいな難題」として立ちはだかるということです。

「じゃ、見て見ぬフリをするのか」
「スルーすればよいのか」

違います。それも「無視しようと」している点で状況を問題視している姿勢から離れていません。

変えようとしないというのは、起こってしまった出来事(状況)は起こってしまったこととして、いったん認めることであり、「ああ、いまこういう状況があるのだな」とその現実を受け入れることです。

認める、受け入れるということはその対象を敵視せず(否定せず)ありのままをニュートラルな位置でながめることを意味します。

「認める」とか「受け入れる」という言葉を使うと「なす術もなく負けた」かのような印象を受ける人がいるかもしれません。
あるいは何もせずあきらめることだと解釈するかもしれません。

そうではなく、私が言っているのは「事実」に抵抗することで事態をより悪化させてはいけないということです。

すでに「起こった出来事」を変えようとアレコレ対処し、画策することは「現実への抵抗」に他ならず、抵抗するほどその「現実」は強固なものになってしまうからです。

だから受け入れるのです。受け入れればその「不都合な現実」はそれ以上に大きくはならず、こちらのあり方次第で流動的なものへと変化します。

要するに「変化」する可能性(スペース)が生まれたということです。

ニュートラルのものとして受け入れる

さて状況を受け入れたら次にすべきことは何でしょうか。

ここからは少しハードルが高くなります。

それは状況や他者をコントロールしようとせず、自分の「見方」(自分の内面)を変えるということです。

これはなかなか難しいことです。私もこの心境に達したのは最近であり、かつては外側すなわち状況を変えようと奮闘してきました。

外側を変えようとすることは「原因は常に相手にある」という考え方です。悪いのは相手(状況、他者)であって自分は正しいという見方です。
しかし、この考え方(見方)に立つ限り事態は改善しません。
では、自分の見方を変えるとはどういうことか。

思い切り話を単純化すると次のような例です。

私は長く生徒を教える立場にいたので、どうしても勉強せず成績の悪い生徒を問題視する傾向がありました。(マア、先生というものは大抵そうですが)
特に何度注意しても宿題をやってこないとか、叱っても授業態度を改めない生徒に対しては何とかしようとガンバってしまいます。

つまり生徒を変えようとしている。コントロールしようとしているわけです。こちらとしては相手のためと思って働きかけていても、一生懸命やればやるほどかえって悪化することも多かった記憶があります。
それは私たち教師がたとえ無意識でも「あの生徒は問題である」というレッテルを貼っていたからです。

いったん「ダメな奴」というレッテル超しに人を見てしまうと、仮にその相手が良い面を発揮してもそれを認めることができません。見えないのです。そして人は貼られたレッテル通りにふるまいます。

逆に相手の良い面を何とか見つけ、不安や心配せず信頼するといつの間にか良い方向へ変わっていきます。
これはこちらの「見方」が変わったからです。以前の記事でピグマリオン効果について書きましたが同じことです。

これは「状況」についても同じことが言えるのです。自分は起こっている出来事や状況に「不都合」「好ましくない」というレッテルを貼っているのではないか。そのことが事態を悪くしているのではないか。別の見方はできないか。
そう見方を変えてみる。同じ状況に新たな光を与えることで問題が問題でなくなる、自ずと変化するということが起きてきます。

自分の見方で外側も変わる

ここで少しまとめてみます。
「望ましくない状況を変えることができるか」と問われれば、答えはイエスとなります。

しかしそれは直接的な行動によってではなく、まず自分の認識と見方という「あり方」を先に変えることが前提ということです。

行動は最後といえるでしょう。まず自分のあり方を変え、もし行動が必要なら行動が自然と起こってくるというのが私の考えです。

まず最初は、起こっている状況を「確定した事実」とニュートラルに受け入れること。
「こんなことは起こるべきじゃない」などとエゴ的に反応して悪戦苦闘しないことです。

そうして状況をニュートラル(中立)に見ることで、それに「困ったことだ」「問題だ」と自分が勝手にレッテルを貼っていたことに気づくことができればベターです。

ここまで大抵の「問題」は単なる「出来事」「中立な状況」へと変わります。つまり問題でなくなります。

次のステップは、その状況を良い方向へと強制的に働きかけたりコントロールするのではなく、状況(相手)の良い面学ぶべきことや利点、相手の長所などにできる限り意識を向けてみます。
(そこには色々な教訓が秘んでいることが多い)

一見望ましくない状況の中にも、自分の学ぶべき教訓を見い出したとき問題は自ずと解決し、それどころか思ってもいなかった望ましい状況が訪れていることに気づくかもしれません。

私は自分の「見方」を変えることで、かつて私を悩ましていた様々な問題(トラブル)が次々と消えていくことを経験しています。

もちろん「出来事」は起こり続けます。でもその出来事をイヤな現実、望ましくない状況にしていたのはむしろ自分であったことに気づき、内面に働きかけ自分の「見方」を変えることで外側の現実はいくらでも変化するのだと知りました。まさに「内から外へ」インサイドアウトの法則通りです。

ですから今問題を抱えて悩んでいる方々も一度その問題から離れて見ること。それを問題としているのは誰なのか。問題と見なさなければそれは単なる「出来事」となるのではないか。そしてその「事実」を受け入れ見方を変えてみることでどう変化するのか。
その上で「行動」が必要なら動けばよいのです。
ぜひ試みて欲しいと思います。

画像参照元:Background写真Creativeart – Freepik.comによるデザイン

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