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勉強習慣と勉強意欲 どっちが先?

教育・子育て

勉強習慣と勉強意欲 どっちが先?

子どもに勉強の習慣を定着させることと勉強の意欲を喚起すること。

この2つが子どもの学力向上に必要なことは教育に携わる者なら誰でも知っていることです。

しかし、この2つがバランス良く身につくことはとても難しいのです。

なので学校や塾の先生は、2つを同時に身につけさせるよりは、どちらかというと「勉強習慣」のほうを優先して指導しがちです。

というのも、意欲は内発的な欲求(内発的動機)に基づいており子どもの個性や興味関心に左右される一方、習慣づけは外部からコントロールしやすいものだからです。

その結果、毎日何時間机の前に座って何教科やりなさいとか、ノートに勉強した内容を記して提出しなさいなどと“指導”することができるわけです。

宿題を課しノートを提出させる。これがもっとも古典的な家庭学習指導になったのはそのような理由からで、いわゆる外発的動機づけが普通の指導法と思われるようになった背景でもあるのです。

しかし、本当は「意欲」こそが勉強に向かわせる上で大きな原動力となるものではないでしょうか。
意欲なき習慣は、形式的で惰性になりやすくいわゆるダラダラ机の前に座っているだけ、形だけの勉強になりやすいと思います。

今回なぜこのテーマかというと、実は先日学校の先生たち―ベテランの先生たち―とお話する機会があり、どうも先生たちは「習慣」の大切さに力点を置いている印象だったからです。
「毎日一定時間コツコツ勉強することが大切だ」

そう考える先生方は多いという気がしました。

私は「習慣」も大切だが、そのために子どもたちが形式的勉強に走りすぎて肝心の学力がかえって身につかないことへの懸念を表明したのですが、話はかみ合いませんでした。

私は長く塾で教えていて、いつも感じていたことがあり、それは毎日コツコツやる割に実力がつかない子がいる一方、地道な勉強を嫌い習慣的学習は怠っているが、いざというとき―テスト前など―集中力を発揮して逆転成功をとげる子も少なからずいるという事実です。

そしてそういう子は、コツコツやらないが興味や関心をもてばドンドン自ら意欲的につき進むタイプでもあるということです。

もちろんコツコツやらない子のすべてが一発逆転で成功するとは限りません。
いや、むしろ学力が安定せず結果的に失敗することも多い。

ただ、勉強を形式的にアリバイ的にやっている子はその後の伸びが悪く、心から喜んでやっているわけではないので勉強自体への興味関心も低い傾向があります。結局本心では勉強ギライなのです。

ですから私は学校の先生たちに、「習慣」のみ強調することの危険性を訴えたつもりでしたが、私の言葉足らずもありうまく伝わらなかった次第です。

興味関心が一番大事

しかしそれなら、勉強の意欲を喚起するにはどうすればよいのでしょう。

実は、これは先にも言ったように難しいのです。

意欲は興味関心がわかなければ行動に結びつかないからです。逆に言えば、対象に興味関心が持てれば調べるなり、情報を求めるなり何らかの行動に向かうわけです。

つまり人間が意欲的になるには、興味関心が前提条件であるということです。
そして興味関心がわくことをするのは楽しいから益々意欲的になるという好循環が起こります。

いつも言うことですが、毎日かなりの時間マジメに勉強していたとしても「楽しんでやる」者には勝てないのは事実です。

だから先生など教育者は、まず子どもたちが興味関心をもつよう創意工夫する必要があるのです。そこにこそ相当のエネルギーを注ぐということです。

私が塾で教えていた頃は、国語や社会の教材にマンガを使う、テーマを決めてディベートをする、動画(ビデオ)を見せる。数学ではたとえば「関数の歴史」を学ぶ、英語ならビートルズの歌詞を皆で歌う、理科では講師がなぜかアルキメデスの扮装をして登場するなど、興味を持たせるためにありとあらゆる趣向を凝らしたものです。

特に大事なのは新しい単元に入るときの、いわゆる導入です。
そこが勝負で、子どもたちがその単元の全体像をイメージできるようストーリー性のある授業展開ができるか否か。
子どもたちがいったん興味と関心をもてば、その後はわりとスムースに内容に入っていけるからです。

こうしてまず興味関心をもたせること。それがベースとなって勉強意欲も自ずと高まるというのがもっとも理想です。
その上で勉強習慣が身につけば確かな学力となるでしょう。

親の熱中する背中を見て育つ

ただし、学校や塾の先生に頼るだけでなく本当は家庭でも親が子どもの「意欲」―そのベースとなる知的好奇心―を引き出す姿勢をもって欲しいのです。

難しく聞こえるかも知れませんが決して難しく考える必要はありません。

要点は2つです。

  1. 親が興味関心のあることについて熱心である姿を見せる。
  2. それをさりげなく伝える。

誰でも得意な分野、興味関心のある分野は持っているものです。趣味でも昔やっていたことでも何でも良いのです。それについて心の底から楽しく語ったり、熱中している姿を見せることは子どもの「意欲」を刺激します。

またテレビのニュースなどを見ていて、社会問題や事件について父と母が熱心に語り合う姿も子どもに影響を及ぼします。
親の知的好奇心や関心が子どもの心を揺さぶるからです。

そしていずれの場合も、子どもに直接語るよりさり気なくその姿を見せることがポイントです。
間違っても「これを伝えることで子どもの意欲を引き出してやろう」などと不純(?)な動機を持たないで下さい。

ここが教師-生徒と親-子関係の違いです。

子は親が「自分を操作しようとしている」意図に敏感です。親はコントロール欲求を手放さなくてはなりません。

親自身が無心に、あるいは夢中で何かについて熱意をもって行動しているとき子はその姿から学ぶのです。親子関係では「本音」しか影響力を持ち得ません。

ですから一番よいのは、親が何かに心から「意欲的」に取り組んでいて、それを子どもが見ている状態です。
子どもは自ずと意欲的であることの尊さを学ぶでしょう。

そこには「子どもを教育しよう」という意図さえ見られない。純粋で本音の姿があります。

そのことによってすぐに子どもの学力が上がるわけではないかもしれません。
意欲的になるわけではないかもしれません。

ですが、すぐに目に見える効果となって表われないにせよ長い目で見れば、目先の学力よりむしろ大きな財産となるでしょう。

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