入院をして以来、どうもなかなか頭が回らない私。暇ができるとぼぅっとしてしまう現状に危機感を覚えたのが先週のこと。ちょっと歯ごたえのある本でも読もうかなと思いたち、久しぶりに本屋に行きました。私が本屋に行く場合、巡回順序はほぼ決まっています。まずは旬の新書コーナーをひとしきり眺め、そこから文庫本の棚へ。講談社学術文庫やちくま文庫、中公文庫、岩波文庫のコーナーを重点的にチェックします。この日は中公文庫のコーナーで当たりがありました。その名もウィリアム・マクニールの『戦争の世界史』。
皆さんの中にもこの著者名、見覚えがある方がいらっしゃるかもしれません。少し前に彼の著書『世界史』がTVで紹介されたのです。そのときの売り文句は「東大生協でベストセラー・ナンバーワン」というものでしたが、実際のところ一般的な「ベストセラー本」とは少し趣が異なります。
マクニールの本には有名な歴史上の人物や出来事はほとんど出てきません。それよりも、様々な歴史の動きがなぜ起こったのかを自然環境や社会構造といったなかなか意識に上りづらいポイントから説明するものです。そのため、ある程度世界史の具体的な知識が入っていないと、何の話をしているのかイメージがわきづらいところがあります。つまり、一言で言えば「専門外の読者にはちょっと難しい本」です。
世界史の講師として生徒たちと接していると、「歴史が好き!」という生徒の多くは人物や出来事が好きであるが故に歴史好きになったことに気づきます。伊達政宗が好きだから戦国時代が好き、といった感じです。そのような興味の持ち方を否定することはありません。むしろ歴史の楽しみ方の「本道」であるといえるでしょう。しかし、「ほかの道」もあるのです。現状の歴史教育では、この「ほかの道」を学ぶのは大学生になってから。ただ、皮肉なことに、大学で歴史を学びたいと考える生徒たちは、大学で学ぶ「ほかの道」ではなく、「本道」の方に魅力を感じたからこそ歴史学を志望することにしたのです。その結果、実際大学に入ってから「違和感」を感じる生徒がたくさんいます。
マクニールの一連の著作は、歴史が「好き」な高校生に是非読んでみてほしい一冊です。彼の本を読んで面白いと少しでも思うことができれば、「ほかの道」もきっと楽しめるでしょう。
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