教育研究所ARCS

学校も変わろうとしている

教育・子育て

先週2つの大きなイベントがあり、どちらも教育に携わる者としてインパクトのある経験をした。

今回はそのひとつ某私立高校で行われた公開授業への参加について記したい。

そこで行われた「公開・研修授業」では、何と高1から高3の全授業を一般に公開するという大胆な試みで、私のように招待された教育関係者も含めて百人前後の人々がこの学校を訪れる盛況ぶりだった。
興味深かったのは、どの学年どの教科も教師と生徒が対話型で活発に討論し合う、いわゆるアクティブラーニングの授業だったこと。

これはスゴイと率直に感じた。何しろ寝ている生徒が1人もいない。英語も数学も理科、社会も国語も先生が一方的にしゃべり生徒は聞くだけという従来型の退屈な授業はひとつもないのだ。無論すべての授業を見たわけではない。しかし参観者はどのクラスに飛び込もうが一切の制限はないのだ。我々はどの学年のどんな教科が行われているか一見で分かる一覧表を手に好き勝手に入ることが許されている。

これはなかなかできることではない。学校というところはご存知のように閉鎖的な場所だ。教師も自分の授業を部外者に覗かれることを好まない。ところがこの学校はすべてを公開するという。

参観後教育関係者どうしの質疑、感想会が行われ、ここでも活発な議論が見られた。「これほど生徒が集中しているのは珍しい」「先生の準備が大変だと思うがその甲斐があるのではないか」「自分たちにも刺激になる」という肯定的反応が大半を占めた。

中には「授業が盛り上がっているのはよいが肝心の学力はついているのか」という疑問もあった。恐らく塾関係者だと思う。
その心配には私も同感だが、しかし学校教育というのは目先の点数だけで価値を測れるものではない。

とりわけ授業はまず第一に生徒の知的興味や関心を引き出すものでなければならない。教科そのものに興味、関心が向かなければそもそも学習意欲が起こらないと思うからだ。
その点この学校の授業は学習への動機づけという意味では成功しているし、何よりも教師の側が自らの授業をひとつの「作品として創造している」喜びを感じているところがよい。

これまでの日本の学校は、小学校までは生徒も活発に発言したり教師との対話形式も見られるものの中学、高校と学年が上がるにつれ教師による一方的な解説と受け身にノートを取るだけの生徒という、不活発な光景が一般だった。

これは結局のところ、勉強が「既知のものを覚えればよい」という前提の上に成り立っていて、予め解答のある問題しか提出されない教育事情にあったからだ。

だが今の時代、このような「受け身に与えられた問題を処理するだけの人間作り」は通用しない。政治、経済、国際情勢その他身近なところでは環境問題、雇用形態の急激な変化さらにはSNSの活用法や働き方改革に至るまで、あらゆる分野において旧来の考え方では解決不能つまり正しい答えなど見い出せない状況だ。
これが世界的規模で起こっている。

これまでの古い概念─産業社会の基で作られたシステムや価値観─を捨てて、新しい考えの基で新しいルールやシステム、人間関係のあり方を構築しなければならない。

これは差し迫った問題であり、これらの問題に対応できる人間こそが求められるわけで、当然学校教育も変更を迫られることになる。

そう考えると今回訪問した高校のような取り組みが今後全国的に広がっていくのは望ましいことだと感じる。
生徒自らが主体的に探究する姿勢。調べ討論し発表し合うこと。教師は生徒たちと対話し思考を深めることをバックアップする。

まだまだこの教育は日本においては定着していない。緒に就いたばかりだ。しかしこの方向性は揺るがないだろう。そうでなければ社会はもたないからだ。学校も変わろうとしている。

150年続いた教育はいま歴史的転換点を迎えつつある。そんな感想を持った。

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