教育研究所ARCS

学校の賞味期限は切れたのか①

教育・子育て

もう古くなりましたが学校神話ということばがあります。

特に日本では長くこの「学校神話」が色々な形で社会の中に浸透し、その影響は今も形を変えて続いています。

ところで学校神話とは具体的に何を指しているのでしょう。

ひと言で言うと、学校へ行くことで社会の一員とみなす。逆に言うと学校へ行かなければ一人前の国民とはなり得ないことを前提とし、より上級の学校を出た者ほど社会的地位も約束されるという、学校と社会的地位が連動していることが信じられる物語(ストーリー)です。

 学校神話の誕生

当たり前の話に聞こえるかもしれませんが、そう感じるのはそれだけ私たちの社会に「学校」の存在が浸透しているからであって、少し古い時代、例えばヨーロッパの貴族や中産階級の一部では家庭教師や偉い学者を自宅に招いて、個人授業を行うのが一般だったし、今でもそれを理想の教育と考える人々もいます。

教育イコール学校という図式、特に一般大衆が学校という制度の中で教育を受ける形は、歴史的にはむしろ新しく、定着するのはヨーロッパでも19世紀になってからです。

それは、産業革命後急速に発展する経済国家を支えるためには国民の平均レベル(識字率等)向上が必須と考え、学校という箱物を造りそこに大量の生徒を集めて一斉授業という形で一気に集団のレベルを引き上げてしまうシステムであり、当時は大変斬新なものであったのです。

国家の発展(経済力と軍事力のアップ)と教育のレベルアップをセットと考え、いち早くそのシステムを作り上げた国こそが19~20世紀の帝国主義の時代にあって成功をおさめ、その教育システムを支えたものが「学校」であった。そう言えると思います。

なんだか歴史の授業みたいですが、せっかくだから続けます。

日本の場合もこれらの欧米の列強先進国に習い、近代国家建設(富国強兵)の最重要ファクターとして教育の普及を掲げ、学校令を発布し日本中に学校を作り通学を国民の義務とします。

学校へ行くことはこうして国民の義務となりました。

でもマァ、そのおかげで国民の平均レベルは上がり国力も増しアジアで唯一の先進国になったのはご存じの通りです。

ただ、日本の場合学校制度が“成功しすぎた”ことがその後の様々な問題の要因になったことも指摘したいところです。

どういうことでしょうか。

 日本の学校神話の変遷

私は、日本の義務教育の特徴は当初からその「画一性」にあると思っています。

北海道から沖縄まで、同じような校舎を建て同じカリキュラムで同じ教科書、同じ学校編成。このような例は他国ではあまり見られません。

もちろん国がほぼ同時期に学校を建てたということもありますが、この徹底した画一性こそが地域間格差や言葉(ナマリ方言)の地域差を解消し、短時日に国民の平均レベルを上げた要因なのです。

これによって地方の文化や伝統言葉などが衰退した側面はありますが、逆にスポーツや学校行事、しつけや規律などの独特の「学校文化」もまた急速に広まりそれが新たな伝統や文化になり得た側面もあるのです。

一時期「日本の学校教育は画一的でケシからん!」

ということが良く言われましたが、的を外しています。

画一的だったからこそ日本の近代化はあれほど短期間に完成したのです。

問題があるとすれば画一性ではなく、日本の教育が近代化を急ぐあまり教育内容が欧米先進国の文物(学問や制度)の表面的な受け売り、―背景的思想などは無視しての―知識のつめこみに終始したことだと思います。

これによって私たちは、勉強とは知識の丸暗記であるという思い込みを持ってしまった。

それに輪をかけるようにして、平等主義があります。

日本の大学や旧制高校など高等教育機関は、欧米のように貴族階級や中産階級のようなエリート層中心ではなく、家柄や身分に関係なく平等に開かれています。

学力さえあれば誰でも入れるのです。

私たちはこのことを当たり前と考えることに慣れ過ぎています。

ある意味入試(ペーパーテスト)に合格する力があれば誰でも入学できるというのは、機会の平等という意味では画期的であることを忘れてはなりません。

こうして日本でも産業革命が起こる明治後期には、大学や専門学校を出た者たちが即座に高い社会的地位につくことで、一気に学歴獲得競争に火がつきます。

それは学校神話が学歴信仰とセットになり日本中が、学校を通じて“成り上がる”下剋上の様相を呈する時代と言えます。

次回に続きます。

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