7月に入り気温もうなぎ登りの今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。わたしはといえば、暑いのがとにかくダメ。休日は部屋でガンガンにエアコンをかけて引きこもっています。思い返せば小学生の頃、夏の真っ盛りに朝から晩まで外で遊び回っていたあの元気はどこにいってしまったのか。変なところで年をとったことを痛感しますね。
さて、去る7月9日、教育研究所ARCSでは「塾選びパーフェクトマニュアル」なるイベントを行いました。
かなり色々と話したのですが、話者であるにもかかわらず、私自身が「よい塾」探しって本当に難しいものだなと改めて実感しました。
「よい塾」ってなんだろう
「よい塾」を探すためには、その前提として「よい塾」とは何かがわかっていなければなりません。探す対象がはっきり分かっていなければ、見つけ出すことはできないのです。
では、「よい塾」とはなんでしょう。
よくある答えは「志望校に合格させてくれる塾」「やる気をかきたててくれる塾」「勉強の楽しさを教えてくれる塾」「面倒を見てくれる塾」などでしょうか。プラスで「授業料が安い塾」というのもあるかもしれませんが、これは料金表を見ればすみますから簡単ですね。
結論から言ってしまえば、よい塾とは“生徒・保護者のニーズがある分野を「得意としている」塾”です。実際のところ、塾はそれぞれに「得意なフィールド」を持っています。逆に「苦手なフィールド」もあります。
ウェブサイトや新聞の折り込み広告を見ると、どの塾も「あれもできます」「これもやります」と横並び状態なので、保護者の皆さんは「塾は全部やれる」と思われるかもしれませんが、これは例えば、おそば屋さんのメニューにカレーライスが載っているようなもの。当然おそば屋さんであれば自信の看板メニューはおそばであり、カレーはおまけでしかありませんね(時々カレーの方がおいしいお店もありますが…)。
おそば屋さんであれば、看板メニューがなにかはすぐに分かりますが、塾の場合はどの分野を得意にしていてもすべて同じ「塾」です。ですから、この看板メニューを見つけるのが結構難しいのです。
塾の形態と看板メニュー
例えば、大手集団指導塾。全国展開でTV広告も打っている塾です。このようなタイプの塾の場合、看板メニューは「教材の質」と「情報量」にあります。
資本力があり、マンパワーもあるこのタイプの塾の場合、教材作成専門の部署がありますから、授業の空きコマに講師が個人でプリントを作る小〜中規模塾に比べて、教材の質は断然高くなります。志望大学・高校に合格するために必要な知識が過不足なくまとめられていて習得の順序も合理的ですから、効率よく難関校に受かりたい場合には素晴らしい武器になります。
一方で、苦手なのは「面倒見」です。全国に大量の教室を出すためには、講師の質、仕事内容を規格化しなければなりません(規格化しないと、大量に新人を教育できませんから)。すると、講師一人一人の裁量の幅は明確に狭まり、結果として当事者意識が薄くなります。つまり、構造的に、「先生」というよりは「子供という商材を扱う会社員」になりがちなのです。
看板メニューとニーズのフィット
「教材の質」と「情報量」を看板メニューとする大手集団指導塾は、まさにそれを求める生徒・保護者にとってはとても「よい塾」になります。しかし、「面倒見」を求める生徒・保護者にとっては当然のことながら「悪い塾」です。
前者はよいとして、後者の場合は困りますね。保護者としても、「うちはしっかり生徒を面倒見ますよ」という宣伝文句を信じて入塾させたのですから、悪いのは明らかに宣伝している塾の方です。しかし、現実問題として「面倒見」という言葉はどうとでもとれる抽象的な言葉ですから、詐欺で訴えられるわけでもありません。結局のところ生徒・保護者が自衛するしかないのです。
ちなみに、学年が上がれば上がるほど、いわゆる「面倒見」と「難関校合格」は反比例する形になります。生徒の心情、素行にまで目を配るというのはとんでもなく時間がかかることです。一方で、難関校の入試で要求される知識の量は膨大で、高度な思考力も求められますから、講師としては生徒指導に時間を割くよりも教材研究や授業法研究に時間を割かなければ、そもそも生徒は入試に受かりません。両者を両立する講師も中には居ますが、それは「例外」と考えた方がいいかもしれません。塾が宣伝でどんなことを言っていようと、です。
塾に求めるものはなにか
結局のところ、自衛のための手段は一つ。自身のニーズをしっかり把握しておくことでしょう。
難関校合格なのか学校の成績アップなのか、モチベーションの喚起なのか、それとも託児所的な存在なのか。これらのニーズは完全に独立したものではなく、一つがうまくいくと他もうまくいくことは大いにあり得ます。
モチベーションが上がった結果学校の成績が上がり、さらにやる気が出て難関校合格につながった、などというケースは王道でしょう。しかし、ここで言いたいのは、モチベーションを上げるのが「看板」の塾が難関校合格のノウハウについては弱い、というパターンも数多くあるということ。これは特にノウハウが重要になる大学入試で顕著かもしれません。この場合、もし「モチベーションをあげること」がニーズだったのであれば、その目的は達した、と考えた上で、次のニーズとして難関校合格が「看板」の塾を選べばよいのです。
安易に「モチベーション」はうまくいったからこのまま受験も、と考えてそのまま最初の塾を続けさせ、結果的に受験に不合格になったとしても、それは塾の失敗と言うよりは、塾の「選び方」を失敗した、というべきでしょう。
生徒の状況は常に変化します。それにともない、塾に求めるものも変化します。その変化に合わせて塾選びを考えるのは、生徒にも保護者にも多大な負担がかかります。しかし、カレーはカレー屋さんで、おそばはおそば屋さんで食べるように自由にお店を選択ができるのは、一度入ったら3年間は変えられない学校とは異なる、塾の最もよいところかもしれません。
塾の「看板」を冷静に見抜き、ニーズに応じて使い分ける。これが生徒・保護者にできる唯一の自衛策です。
今塾を探しているけれど、塾の「看板」が何か分かりづらい。
そんな場合には是非ARCSに相談してみてください。できる限りアドバイスしますよ!
コメントはお気軽にどうぞ