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BREXITと大学入試

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BREXITと大学入試

先月の23日にイギリスでEU離脱か残留かを問う国民投票が行われたのは記憶に新しいところです。直接的な利害関係がゼロな私はのんきにネットで結果の推移を見ていましたが、離脱という結果にはやはりとても驚きました。特に日本では、イギリスがEUを離脱によって被るであろう不利益ばかりが報じられていたのもあって、まさか離脱を選ぶとは思いもよらず…。
投票結果が出そろった後も、半ば野次馬的に報道を見守っていましたが、どれもこれも「イギリス人は選択を後悔している!」「今後のイギリスはとんでもないことになる!」という内容ばかり。心の底でなんとも釈然としない感じでした。経済的な効用もさることながら、このイギリスの判断に非難一色の報道の背景には、EUのような地域統合を当たり前のように「善」とする姿勢があるように感じられるからです。
この「ある考え方を当たり前のものとして論を進める」感じ。それに釈然としない自分。どこかで感じた感覚だと記憶を探ってみると、思い当たりました。大学入試の国語(現代文評論)の内容そのものなのです!

大学入試の国語の問題は、出題される文章の表面的なテーマは多岐にわたるものの、根本的なテーマはほぼ一つです。
それは「近代批判」。17世紀以降西欧社会が作り出した科学的、理性的世界観がもたらす様々な弊害を論じるものです。「テロ」「人種差別」「環境問題」「移民問題」など時事問題の紹介から始まり、その根本的な原因を近代の西欧思想そのものに求める形式が一般的です。大学入試の問題は、一読するととても難解に感じるのですが、文章のパターンが分かってしまうと実は理解するのはそれほどむずかしくはありません。どの学校のどの文章もだいたい「オチ=近代的価値観はよくない」が同じなのですから。
そんなわけで、何年も授業で教えていると、段々飽きてきてしまいます。「あ-、この文章も近代批判。つぎも結局近代批判…」と。
もちろん近代の理性偏重が様々な問題を引き起こしているのは事実でしょう。どの文章も納得できる理屈ばかりですから。しかし、ここまで判を押したように同じ内容ばかりだと、あまのじゃくな気分にもなります。一回でいいから「近代肯定」の文章が出題されないものか。
多感な高校生が真剣に読み込む入試問題だからこそ、いろいろな考え方、見方に生徒を触れさせてほしいのです。そうすれば、今回のイギリス離脱問題を見ても、条件反射的に「離脱派は愚か!」と終わらせてしまうのではなく、離脱派の人々の主張に対して少なくとも一考できるようになるのではないでしょうか。

正直なところ、2020年の改革以降もこのテーマの固定化はなかなか変わりそうにありません。ですが、パターン解法がかなりの割合を占める現状の入試よりはもう少し勉強法が柔軟になるのではないかと微妙に期待している今日この頃です。

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