前に良き親とは…について話しました。(⇒理想の親ってどんな親?)
良い親であるとは難しい。なぜならどんな親でも子どもに健全に育って欲しい。そのためには親子関係が大切だと思っているからです。
が、しかしではどんな風に子どもと接することが良い親のあり方なのか今ひとつ分からない。
答えが見つからない。
子どもに良かれと思ってやったことが裏目に出たら?
今自分は取り返しのつかないことを子どもにしてしまっているのではないか?
今の自分は子どもと正しく向き合えているのだろうか?
疑問はふくらみます。悩みも尽きません。
では、ひとつ。親の皆さんに質問です。
皆さんは親としてどんなことに気をつけてお子さんと普段接していますか?
私も実際にこの質問を親御さんに投げかけることがあります。
すると大抵このような答えが返ってきます。
「頭ごなしに叱りつけないようにしています。」
「なるべく一方的に押し付けないようにして、子どもの意見を聞くようにしています。」
「ゲームやテレビは一定の時間を決めて、その範囲でやるようルール作りをしています。」
「あまりうるさく言うとダメだと思うのでなるべく言わないようにしています。」等々。
なるほど。皆さんなかなか苦労されているようで、子どもとの接し方に並々ならぬ配慮が感じられます。
ただ、残念ながらこのような接し方は実際にうまくいくとは限りません。
何故でしょうか。
「頭ごなしに叱ってはいけない」は必ずしも正解ではない
理由の一つは、これらの「正しい接し方」が子育て本などに書いてある一般論に過ぎないのに、誰にでも当てはまる「真実」だと思い込んでいることです。
巷にあふれる育児書や子育て本に書いてあることは、時代の価値観に影響された一つの“意見”に過ぎません。
けっこう時代と共に変わります。
そもそも何時いかなる場合にも当てはまる正解などというものはありません。
「頭ごなしに叱ってはいけない」などもそうです。どんな状況でも頭ごなしに叱ってばかりいるなら、それは親の頭を疑うべきですが状況によっては必要なときもあるでしょう。
たとえばあなたに娘がいるとして、その娘が友人と遊びに出て夜電話してきたとします。
「いま友達とカラオケにいるんだけど、盛り上がっちゃって…最後まで歌っていてもいい?」
時計を見るともう夜の9時です。このまま遊んでいると帰るのは深夜になる可能性があります。
あなたはこんな時でも頭ごなしに叱らないのでしょうか?
「絶対ダメ。すぐに帰って来なさい!」
娘がどんなに懇願しても「頭ごなし」に拒否して帰宅させるのが正解でしょう。
子どもが○○時から勉強といっているのにダラダラソファで寝転んでいたらどうでしょう?
私なら「おい!さっさと勉強しろ!」と有無を言わさず叱りつけます。
(もちろん状況次第です。たまたま部活の大会などで疲れ切って、いつの間にか寝てしまった場合なら叱らないかも知れません)
だからあなたとお子さんの置かれているその時々の状況や、日頃のお子さんの生活態度それに2人の関係性それ自体によって正解は違うということです。
子育て本に書かれていることや、メディアなどで流されている情報や知識などの一般論をマニュアルのように信じ込み、我が子に当てはめることはやめることです。
盲信せず一つの意見として参考程度にとどめて下さい。
良い親であろうとする必要はない
もう一つの理由です…。
なぜ先ほどの親御さんたちの「模範回答」がダメなのか?
それはそういう回答をする親が「良い親であろう」としていることに関わってきます。
どういうことでしょうか。
良い親であろうとする親はその時点で自然体ではない。
というか自然体を見失っているわけです。
そもそも親子関係というのは、友人関係やビジネス上の人間関係と違って理性的なものではない。友人や仕事関係など赤の他人同志では「これ以上踏み込まない領域」とか礼儀など一定のルールに支配されています。
一方、親子関係は血のつながりに基づく家族であり、理性よりはもっと肉親としての情に支配される関係です。
つまり赤の他人には見せない、ナマの感情交流の上に成り立つ関係です。
こう書くと「そりゃ当然だよ。ナマの感情が行きかうから家族なんだろ?」という気づきが起こると思います。
だから「頭ごなしに叱る(感情的に叱る)のではなく話し合いで…」という考えそれ自身に矛盾があるということになります。
その態度は、赤の他人には適応すべきルールですが肉親には適応できないものなのです。
親であるあなたにもう一度聞きます。
子どもが勉強もせずソファでゴロゴロしていたりいつまでもスマホでゲームを続けている姿を目のあたりにして、どんな感情が浮かびますか?
怒り? 不信感? 焦燥感? 絶望(笑)? それとも悲しみ?
いずれにしても何らかのネガティブな感情が浮かぶのではないでしょうか。
しかしあなたはそれらのネガティブな感情を抑えて「あら、勉強しなくていいの? もう時間よ。いつまで寝ているのかしら…」など「正しく諭すように叱る」わけです。
この時子どもの心は何を受け取っているでしょうか。
怒りです。
怒りであり悲しみであり不信であり、絶望の方です。
あなたの本音であるネガティブな感情こそをしっかりと受け取ってしまうのです。
あなた(親)は2つに分離しています。
心の中では「怒り」(本音)頭の中は「良き親のイメージ」(建前)。
あなたと子どもは肉親の愛情でつながっています。
子どもはこういう時必ず親の感情(本音)の部分を察知してこう反応します。
絶対(ゼッテー)やらねー。
これはあなたが心の中で怒っているから「怒り」を返したのではありません。
怒っているのに怒っていないフリをしている、
「感情的に怒るのは良くない。冷静に叱るのでなくては(本にも書いてあった)」と頭で考えて、つまり良い親を演じている「不自然」に対して怒っているのです。
怒っても良いのです。
感情的になってもいい。
時にはあなたが母親なら、泣き叫んでもいいのです。
だってそれが本音だから。
だってそれが家族だから。
そう考えたらシンプルになります。
難しく考えないで下さい。
できるだけあなたも子どもの前で本音で居て下さい。
親だって人間です。欠点もいっぱいあります。
欠点や弱みが子どもにバレても良いじゃありませんか。
(というか大抵はバレバレです)
たくさんの弱みや欠点を抱えた一人の人間として子どもの前に居て下さい。
そして子どもといる時間をただ大切にそして楽しく過ごしてみましょう。
良い親であろうと肩肘を張らないでいましょう。
大丈夫です。
子どもはあなたが思っているよりずっとたくましいのです。
あなたが欠点をさらしたところで子どもはあなたの良いところ、エッセンスだけを吸収していきます。
ちょうど私が父からそうしたように。
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