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入試の悪問は本当に悪問か?

受験

悪問は本当に悪問か?

2月と言えば受験真っ盛り。大学入試も私立大学でピークを迎えています。私も高校三年生を教えているため、生徒がよく受験を終えたその足で訪ねてきて、入試問題を見せてくれます。

私立大学の入試問題は基本的に「マーク式」です。私立大学では受験者の数が非常に多いため、学校側は記述式の答案を全て採点する時間がありません。そのため機械読み取り式のマーク式を採用せざるを得ないわけです。マーク式の試験を作る場合、当然問題形式は「選択式」になります。いくつかの選択肢から正しいもの(あるいは誤ったもの)を選ぶ問題は、採点がとても簡単な反面デメリットもあります。それは、生徒の思考過程が確かめられないこと。出題者があらかじめ提示した選択肢があるわけですから、答えはその中からしか生まれません。そうなると、答えとなる選択肢を「なぜ選んだのか」を見ることが重要になりますが、記述式でない以上、採点者ははっきりした理由を知ることはできません。結果として、勘で答えを選んだ生徒も、正しい解法を思い浮かべて答えを選んだ生徒も、同じ正解となってしまいます。

このような制約を持つマーク式の中で何とか生徒の「思考過程」を読み取ろうと、実は出題者は必死で取り組んでいます。「大学入試の“悪問”」としてよく面白半分に取り上げられるのが、日本史や世界史など社会教科です。教科書に全く記述がないマイナーな人名や出来事を答えとして要求している問題などは、いわゆる「知識偏重の“古臭い”入試問題」として恰好の標的となります。

今年であれば、私立大学の世界史で例えばこんな問題が出ていました。日本の平城京と“ある国”の首都の面積を比べた時にどちらが大きいか、というものです。「ある国」にあたるのは、少しマイナーですが教科書でも触れられている国で、生徒たちも首都の名前まではおぼえているのがふつうです。しかし、面積となると、そんなもの覚えているわけがありません。
「これは悪問だ!」そう思うかもしれません。でも、実はこの問題で採点官が見たいのは面積ではありません。「ある国」が栄えていた当時、東アジアにおいて「ある国」はどれくらいの重要性と影響力を持っていたか。あるいは、「ある国」の規模がどれほどかわかっているかなのです。ただ名前だけを機械的に覚えている生徒は、当時の極東で「ある国」が占めた国際的地位など全くわかりません。しかし、興味を持って調べてみた、あるいは歴史の流れをしっかり学んだ生徒にとっては、「ある国」が当時かなり大国であったことは分かるわけです。すると、首都の大きさもかなりのものだったであろうと推測して、「平城京よりも大きい」を答えとして選択することができます。正直なところ、この問題が「ぎりぎり」のものであることは否定できません。ある国が大国であるからと言って、それがそのまま首都の大きさに反映されるとは保証できないわけです。数学的な厳密性は言わずもがな、単純な推測問題としてもかなり「ぎりぎり」でしょう。

でも、「悪問」の一言で片づけたくない気持ちもあります。マーク式という制約の中で、何とか生徒の思考過程や勉強に対する意識を覗きたいという試行錯誤がこの問題の裏にあるように感じるからです。やはり、講師という「問題を作る側」に立ってみると、どうも判断が優しくなってしまうようです。

今年も入試が終われば教科を問わず様々な「悪問」が世間に出回るでしょう。でも、一刀両断する前に一度「この答えを出させることで、出題者は何を見たかったのだろう」と考えてみると、また違った入試問題の姿が見えてくるかもしれませんね。

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