12月22日に行われた文部科学省の高大接続システム改革会議で、話題の「大学入学希望者学力評価テスト」(センター試験と置き換えるテスト)の問題イメージが公開されました。
「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」で評価すべき能力と記述式問題イメージ例【たたき台】
これまでは大まかな方向性は出ていたものの、具体的にどのような問題となるのかについては全く不明でしたが、今回のイメージで何となく見えてきた気がします。
今回公開されたのは「国語」「数学(Ⅰ)」「英語」の3教科。一応自分のフィールドである国語についてはじっくり、英語はさらっと、私自身が苦手な数学はほぼ一瞥のみですが、一通り見てみました。
では、とりあえず国語を見てみましょう。なんというか、県立中高一貫校の入試問題にかなり似ています…。公立一貫校ではいくつかの図やグラフを読み取り、そこから分かることを問題の会話文を穴埋めする形で答える形式がよく使われます。今回の問題イメージ<例1>(上記アドレス中)もまさにそんな感じ。単純な3つのグラフを読み取り比較検証した上で自身の仮説を述べる形ですが、難度はそこまで高くなく、問題文中にしっかりと答えの誘導もあります。このレベルであれば、県立中高一貫校の難問のほうが難易度は高いくらいでしょう。
問題イメージ<例2>は問題文に省略があるので確かなことはいえませんが、これも文章の要約(余計なノイズを除去し、問題となっているテーマのみに焦点を当てる)ができていれば難度は高くありません。大学入試でいえば、慶応などが似たようなパターンの問題を小論文で出していたように思います。もちろん難易度は慶応の方がかなり高いですが。
問題イメージ<例3>はまさにこれまでの小論文です。中堅レベルの国立大学が出題するような、社会で実際に起こっている問題に対してその対応策を書かせる問題でした。
この3つの問題を見る限り、全体的にこれまでの大学入試にくらべて「要求する力」の方向性を大きく変えようとしていることは分かります。
これまでの入試においては、特に上位校のそれは明らかに「論文を読む力」を問うものでした。出題される文章のテーマも現代思想系が多く、抽象的な概念を本文を手がかりに「定義」できることが求められていました。中には「これを文理問わず全学生に問うのは酷では」と思わせるような難解なものも出題されています。その結果多くの生徒は、本文を本当の意味で読解することはできず、ただ参考書的テクニックを使って「答え探し」をするしかなかったのです。
翻って今後の「大学入学希望者学力評価テスト」では、より「地に足のついた」レベルの問題になりそうです。ごく一般的な学生であれば、少なくとも問題文の意味はしっかり読み取ることができるレベルです。一方で、自分の言葉で意見を書かなければなりませんから、その分は少し努力を求められますが、いずれにしてもテクニカルにパズルを解くしかない現状の試験よりは「マシ」でしょう。
ただし、これまでのセンターが、真正面から本文を読み取れる生徒も180点、パズルを解いた生徒も180点(センター試験国語は200点満点。9割にあたる180点を取れれば、東大レベルに出願しても不利にはならない)と差がつかず、高度な読解力を持った生徒を選別しきれなかったのと同様に、今後のテストもまた、高度な思考力を持った生徒を選別することはできないでしょう。それをするには問題が易しすぎます。
正直なところ、この程度の試験であれば対策のしようはいくらでもあります。過去問を大量にこなすだけでも何とかなるでしょう。つまり、高校の学習カリキュラムを大きく変える必要は、こと「大学入学希望者学力評価テスト」に限って言えば全くありません。しかしこれは「大学入学希望者学力評価テスト」の方向性が問題なのではなく、難度が易しすぎるがゆえです。この方向性で難度を大きく上げた場合、付け焼き刃の演習授業では手も足も出なくなります。
これまでの入試システムと同様、最終的には大学側が独自に課す試験(面接であれ論文であれ)に重点が置かれるとすれば、そちらに対応するためにこそ「勉強のやり方」を大きく変えていく必要があります。その意味では、今回発表された問題イメージよりも、今後の国立大学の推薦入試や二次試験の出題傾向に注目するほうがよさそうです。
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