教育研究所ARCS

15歳のイニシエーション①

受験

自立するのが大変な時代

前回(=ココ)は、男の子は育てにくい(育ちにくい)というお話でした。
ところがこのブログを読んだ仲間から「イヤァ女の子だって育ちにくいよー。っていうか昔より全体に自立してないし…」という苦情(?)が来ました。

私としては「そういう意味じゃないんだけどなァ…」と思いましたが、確かに若者が自立してない、自立が遅いという印象はありますね。

勉強面でも自立心があるかないかで大分差がつきます。

入試などが近づいたとき自立している子はそうでない子よりも合格率が高いというのは、我々教育現場にいる者には良く知られた事実です。
「あの子は受かりそうだな。自立心がでてきたから」などと…。

 昔は15歳で社会人?

ではこの場合の自立とは何でしょう。
カンタンに言えば依存的でない。ということでしょうか。

もう少し詳しく言うなら、目の前にやるべき一定の「課題」があるとしてそこから目をそむけず自分の意志で解決する姿勢といえるでしょう。
いつも誰かにやらされている感がしたり、少し困難なことに出会うと他人に頼ったりする。失敗したら他者のせいにする。
これが自立していない人の特徴ならその反対が自立している人ということになります。

その肝心の自立心ですが、最近の子どもたちや若者を見ているとやはり少し欠けているなというのが正直なところです。

色々原因はあるのでしょうが私から見ると2つ。

1つは社会構造的なもの。

2つめは親子のあり方からくるもの

…ですかね。

社会構造の話をすると、これは良く指摘されることですが文明化が進み社会が複雑になればなるほど、人が一人前になるのに時間がかかる。

従って社会に出るのが遅くなる。つまり学生時代が長くなりその間自立しにくくなるというわけです。

それだけ社会に出る前に身につけるべき知識やスキルが多いとも言えるでしょう。

一方昔は中学あるいは高校を出たら、すぐ社会人として働くのが普通でした。

ちなみに私の母は昭和ひとけた生まれですが、高等小学校しか出ていなく、私が子どもの頃は「女学校に行きたかったが行けなくて悔しかった。」とよくグチをこぼしていたものです。

高等小学校というのは小学校6年間の後に、2年だけ高等科に行けるシステムでそこを出たら働くというのが戦前では普通だったようです。

小卒ですね。

つまり戦前までは大半の人は15歳で社会に出ていたわけです。

マァ、当時は男女共に15~16歳で一応自立せざるを得なかった。(今の常識からするとスゴイことですね)

何しろ女性は17~18歳くらいで子どもを産んでいたくらいですからね。

要するに今よりも社会が単純な構造で平均寿命も短い時代、人が比較的早く自立するのは当然と言えば当然だったのかも知れません。

 親の「自立」が先かも知れないワケ

もう1つ、今の若者が自立しにくい理由。

それは親が子どもをなかなか自立させようとしない傾向があるということ。

これはおそらく今までになかった現象だと思います。

口ではどの親も「子供に自立して欲しい」と言いますが心の中は反対です。

いつまでも手元に置いて可愛がってあげたい!!(笑)

図に書くと…

141128

ということになります。

この「本音」の部分は自覚している人もまれにいますが、ほとんどの親は無意識に思っているだけで気づけていません。

昔は家も貧しく、その上子どもの数も多かったので早く家を出て自立してもらう必要があった。いつまでも子どもを可愛がって手元に置く余裕がなかったのです。

しかし今はその余裕がある。

子どもも経済的に自立せずいつまでも親元に居つくことができ、親もまたそのような子どもを抱え込む余力があったりする。

我々はこれを親による子どもの「囲い込み」(笑)と呼んでいます。

イヤ、これは笑っている場合ではないかも知れません。

ニートや引きこもりの温床として親の「余力」があるとしたら、あるいは「いつまでも手元に置き子どもの親であり続けたい」という無意識の思いがあるとしたら、それは社会的損失ではないかと感じるからです。

前回の「息子を優しい男にしたがる」母親の話と同じく、最近の親は意識的無意識的を問わず我が子に影響を及ぼしたがる傾向があると感じています。

そこに、いつまでも「子どもの親」でいようとする情念のようなもの、子どもの親であることでしかアイデンテティーを得られない淋しさを感じ取ってしまいます。

まず親が子どもから“自立”することが先なのかも知れません。

こうなる前に本当は子どもを自立させる必要があるのです。

そのチャンスは思春期にあると私は思っています。

先ほど14、15歳になると昔は社会に出ていくという話をしましたが、この年齢こそが第1回目の親離れ子離れに適した時期だと考えられるからです。

それを私は「15歳のイニシエーション」と呼んでいます。

次回はそのことについてお話しようと思います。

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