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学校は変われるか  親と先生の遠い距離

教育・子育て

学校は変われるか  親と先生の遠い距離

少し前ある学校の若い先生たちとお話する機会がありました。
話は学校運営のことや教科の指導法など多岐に渡りましたが、若い先生たちらしく皆自分なりの理想や意見を語って大いに盛り上がりました。

世間では学校の先生に対して厳しい考えを持つ人も多いし、私自身もそう感じる時もあるので先生方と話す際は遠慮なく指摘させてもらっています。
たとえば、学校の先生方は生徒の親にあまり情報開示をしません。批判を恐れて自分たちの考えや方針などを胸にしまい込むことが多く、それがかえって「閉鎖的だ」という批判を呼んでしまう。
すると益々貝のように口を閉じてしまうという悪循環に陥る。

なので私は、自分の経験からも先生方はもっと自分の考えていることを親に伝えることで信頼を得られるのだと事あるごとに言います。

これは公立でも私立でも基本は変わりません。どうも学校は親の存在を煙たい者、自分たちを批判的に見ている者と決めつけているようです。

確かに親の中には、ささいなことで文句を言う人や子どもの基本的しつけもせず全てを学校に丸投げして平気な人もいるでしょう。
前者はクレーマー、いわゆるモンスターであり後者は無責任で依存的な親です。

しかし大部分の親はそうではありません。我が子が学校でどんな様子なのかを知りたいと思い、担任の先生の教育方針を理解したいと思っている善良な親なのです。

そして多くの親は子どもが世話になっていることもあり、先生に対してあからさまに疑問の声をあげることを遠慮しそれでも時々「これはどういうことでしょうか」と確認する程度ですが、それに対して学校は過敏に反応し「うるさい親」とレッテルを貼ったり、時にはクレーマー扱いしたりします。

そうなると親も言いたいことを我慢してしまい結果として不満がたまりやすくなるのです。

冒頭でもお話したように、ざっくばらんな席では先生方はそれぞれ自分なりの教育観や理想の指導法を語り、皆真面目に生徒のことを考えている人たちなのです。

でもそのような考えを親に披露する機会はめったにないのです。これは残念なことです。

学校はもっと情報公開を

学校の先生と親の間には相互不信があり、これを打破するためには互いに歩み寄る必要があるのは事実です。
しかしそうするためにはまず学校の方から自己改善する動きが必要と私は感じています。

学校はもっと情報を開示して親の協力を得る努力をすべきです。まず校長自ら学校経営の基本方針を示し、各先生方も自分のクラス運営や指導方針を自らの言葉で語ることです。
中には開示したくないこと、不都合なこともあるでしょうがそれも含めて「改善」の道を示すことが大事です。
特に若い先生たちの「教育への情熱」を親たちにも「見えるカタチ」で示すこと、そしてベテランの先生方の技術でサポートする体制を明示すれば親の信頼感も増します。

ところでなぜ親に説明することが大事なのでしょうか。単に説明責任という言葉では表し切れない重要性があるからです。

それを私の経験も交えて話すと以下のようになります。
学校でも塾でも、勉強を教えるとき教科ごとに項目がありそれをいつまでやるか期限があります。また学期ごとの到達目標やテーマもある。学年別の指導方針もある。
それらの目標やテーマ、指導方針については生徒に説明しても十分伝わりません。
むしろ親にこそあらかじめ伝え、その方針に沿ってどのような授業展開が行われるか知ってもらうことで親も子どもの進展具合を把握しやすくなるのです。

また、当然理解の進んでいる子や進まない子も出てきます。遅れている子をどうするのか。補習授業をするのか、課題で済ますのかあえて何も対策をせず奮起を期待するのか各々理由を知ってもらわなければなりません。

さらに先生の授業について子どもたちはどう感じているのか。要するに評判の良い授業かどうかもアンケートなどを基に公開し、評判の良くない先生の授業についてどう改善していくのかを説明するのも立派な説明責任です。

私が塾経営をしているとき、生徒アンケートによる教師評価一覧(トップからビリまで全て載っている)をプリントにして保護者会で配布したこともあります。
むろん公表するだけでなく授業技術の劣る先生を研修などで、いつまでに改善させるかも方針として示しました。

この「都合の悪いこと」も公開する姿勢が大事。改善法を示し、その努力をこそ親は評価
し安心するからです。方針を明確に示し改善への意欲を見せることで親の理解とサポートが得られ、親の理解とサポートが子どもの勉強姿勢へもフィードバックされるからです。
要するに親が先生を信頼すると子どもにも反映し、成績向上にもつながるということです。

だからまず学校が情報を開示する→親の理解と協力が得られる→子どもにも方針が浸透する→学校の教育力がアップ→生徒の成績に反映
このような好循環ができ上がるのです。

ただ、そうなるためには学校が自らの「閉鎖性」をまず自覚しなければならないと思います。外に対して自らを守ろうとする防御姿勢をやめ、できる限りの開放性、オープンな姿勢を取ること。保護者や近隣住民、世間一般に対しても「批判されるのではないか」「自分たちを攻撃してくるのではないか」という恐れや、その恐れの反映である「クレーマー」「モンスターペアレンツ」という「レッテル」貼りを改めることが必要です。

親も本音を話す

一方、親もまた「学校の先生に対する見方」を改める必要があると感じています。
「子どもが人質にとられているから言いたいことも言えない」とか「先生方は頭が固くて分かっていない」「社会性に欠ける」などの決めつけをやめて、親としての気持ちや考えをもっと率直に述べたほうがよいと思います。

冒頭で話したように先生たちも、たいていは生徒のことを真剣に考え良い教育をしようと努力する姿勢をもっています。
最近の若い先生たちは優秀な人が多いというのが、あちこちの学校を訪問し交流している私の実感です。

かつて大量に採用された団塊世代の教師が退職期を迎え、あと数年でどの学校も20~30代の教師が中心になります。
この若手世代は他企業に比べても優秀な人材が多いのが特徴で、学校の雰囲気も大幅に変わることが予想されます。

教育の世界もある意味大きなチャンスを迎えている気がします。

忘れてならないのは「先生を育てるのは親である」という事実です。
教師という職業は子ども相手であるが故に、直接的なフィードバックがなく独善性に陥りやすく、教室も独立王国になりやすい面があります。
このフィードバックの役割を果たすのは親の役目です。
教師、生徒、親の三位一体が健全に機能するためにも親はもっと建設的な意見や感想を教師に伝え、彼らを育てる意識をもつべきだと思います。

私は30年以上塾を経営してきて一番有り難かったのは、常に意見を述べてくれる親たちの存在でした。
親も塾には遠慮なく意見が言える(笑)。

私もまた、頻繁に親と話す機会を設け説明し、非があるときは素直に謝り考え方の違いについては活発にやり取りすることを通じて、自らの独善的考えを修正し真に子どもたちのためになることを追究することができたと感じます。

もし私が塾経営に成功したといえるなら、それはまさに親のおかげ、親の皆さんのフィードバック(バックアップ)があったからこそといえるでしょう。

学校も教師と親の双方がもっと歩み寄り、形式的ではなくもっと率直なやり取りを行う機会を設ける必要があるでしょう。

それが結果的に子どもの成育と学力向上をもたらすものだからです。

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