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原点は親子の対話にあり

教育・子育て

原点は親子の対話にあり

前回子どもに「説明させること」の大切さについてお話しました。

それは、勉強というものがテストに出そうなところを覚えさえすればよいという、従来の勉強観が受け身なものであったのに対し、自らが問題を提起したその解決法を考えるという、より能動的(アクティブ)な姿勢こそが「新しい学力」に不可欠な要素だからです。

学校教育も大幅に変わろうとしています。ご存知の方も多いと思いますが、生徒をいくつかのグループに分け様々なテーマについて調べ、発表し互いにディスカッションしながら考えを深めていく、いわゆるアクティブラーニングの導入が始まろうとしています。

私も学校の先生方や教育委員会の面々と意見交換する機会も多く、学校現場でアクティブラーニング(生徒主体の授業)をどのようなにスムースに進めていくかが論点になっています。

このアクティブラーニング、本格的に実施すると今までの教育概念が引っくり返るほどのインパクトがあります。

第一に先生が授業の主体者でなくなる。主体者は生徒となり、先生はあくまで生徒からの質問に答えるか、議論の行方についてアドバイスするだけで誘導的に方向を決めないのが原則。

先生はそれまでのように一方的に授業(教え)を授ける者ではなくアドバイザー、サポーターあるいはコーディネーターの役割に徹する。

一方生徒は、従来のように勉強を受動的に「教わる」者ではなく自らが教科や一定のテーマについて「何が問題か」「別の考え方はないか」「どうしてそう言えるのか」一つひとつ根拠をあげて主体的に考えていく。

生徒に求められているのは単に「覚える」ことではなく、調べ、皆で議論し、考えを発表しさらに反論に備えるというタフな姿勢です。

なかなか大変な要求ですが時代が求める人間像であることは間違いありません。

学校現場でもこのように先生と生徒の主客が逆転するほど「主体性ある人間」が求められている、それほどまでに今の時代「自らの頭で考える人間」「創造性のある人間」が必要だということです。

忘れられない「星空のエピソード」

ですから親も頭を切り換える必要があります。親自身が今だに勉強を「覚えればよい」と考え、その発想の下に子どもに勉強を強要しているなら子どもの将来損うものでしかありません。

いや、将来というより現状の学校の授業にさえ不適応を引き起こし成績も下降する可能性があるということです。

親がもし子どもの能力を引き上げたいのなら、目先の点数をやかましく言うより、前回も述べたように「適切な質問」を与えたり「説明させる」習慣をつけさせることのほうが大切だと認識して欲しいのです。

そして何より大事なのは、親子が色々な問題について常に「対話」する姿勢だと感じます。日常のささいな問題から社会で起こっている出来事や、世界情勢に至るまで子どもが興味や関心をもてるよう配慮し話しかけることが望ましいのです。

やはり対話形式は物事を学ぶ上で優れて有効なツールだと思います。

ソクラテスと弟子の対話も、イエスやブッダそして、その信者たちとの対話、アリストテレスとアレキサンダー大王の例でも分かるように古来教育の原点は「対話」にあると感じます。

日本なら、松下村塾の吉田松陰と門下生たちの関係となるでしょうか。

もちろんご家庭で親子が対話するというのは、このような本格的な「師弟の対話」を目指す必要はさらさらなく、家庭で行う親子の対話はもっとカジュアルなもので構いません。

日常会話の延長に過ぎないもので良いのです。

たとえば小学生の子どもと父が、夜空の星を見ているとしましょう。そのときこんな対話(会話)がくり広げられます。

子:ワーッこんな星空久しぶり。吸いこまれそうだ。

父:すごい数の星だね。皆同じように光っているように見えるけど、それぞれの光がここに届くまでの時間は違うんだよ。

子:距離が違うからでしょ?

父:そうだね。あんなに小さな星たちはとんでもなく遠い所にあるんだよ。たいたいは何年も何十年もかかって光が届く。だから星からの距離は「光年」と呼んでいる。

子:あっ、それ知ってる。1光年とか3光年とか言うんでしょ?

父:そう。光年ってどれくらいのスピード?

子:えーっと、光の進むスピードがかな。

父:うん。光はこの世で一番速いスピードで進む。その光のスピードで進んで1年かかる距離が1光年。

子:じゃ、100光年だと100年かかる・・・。

父:そう。いま見ている星の1つが100光年かなたにあるとしたら、その星から出た光は100年かかっていま届いている。つまり・・・。

子:つまり僕たちがいま見ているその星は100年前の姿?

父:そうだよ。その通りだ。だからもしかするとその星はもう存在していないかも知れない・・・。

子:『この星はもう存在してない・・・?存在していないかも知れない星をいま見てるなんて何と不思議なんだろう・・・』

じゃ、お父さんこの星がまだ滅んでないとして今の姿を見れるのは100年後?

父:そうだよ。100年後の人たちが見るだろうね。

実はこの会話、50年以上前に私が父と交わした会話です。

昔は田舎ならどこでも星空が見えたものです。真冬の夜道で父と歩きながら、満天の星空をながめて話した会話を今でもありありと思い出すことができます。

地平線まで埋めつくす星空の中で、私は宇宙の壮大さと神秘、光で表す時間と距離のミステリアスな感動、知的興奮を味わっていました。

この父との会話は5分にも満たないものだったでしょう。「対話」というには短すぎる小さなエピソードに過ぎません。

しかし私にとっては確実に人生でもっとも印象に残る「対話」だったと感じます。

それは私の想像力と知的好奇心を強く刺激し、「真理を追い求めたい」という欲求に火をつけたからです。

人生の方向を決定づけたと言ってもよいほどのインパクトでした。

長々と私事を書きましたが、このエピソードで分かるように「対話」は特別難しいものである必要はないのです。「学問的」である必要もなく、日常の何気ない会話を通じて子どもの興味関心のありそうなテーマについて、ちょっとしたヒントを与え考えさせれば十分です。

ただ、決して「上から目線」で教えてやるという姿勢ではなく、「不思議だね」「どうしてだろうね」「他の考え方はないかな」という、同じ目線で対話する姿勢を心がけて欲しいと思います。

勉強、とりわけ勉強の土台となる知的好奇心は教室だけで育むものではありません。

むしろ「親子間の対話」が家庭で日常的に行われていることこそが大切だと感じています。

特に、これからの時代想像力に裏うちされた知的好奇心と勉強意欲がますます人間の「値うち」として重要視されると思われます。それは「対話」を通じて培われるものだと信じます。

どうか少しづつでもこの「親子の対話」を増やしていただけたら幸いです。 

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