塾で生徒と話していると、定期テスト前に必ず聞かれるのが「時事問題」。よく「ヤマ」をかけてくれと生徒に頼まれるのですが、当然のことながら根本的な解決にはなりません。時事問題に関して問題作成者が求めているのは、ある特定の問題を知っていることではなく、普段から時事問題に興味を持ち情報を仕入れているかどうかですから、たまたま一回の定期テストでよい点数がとれたところでそれ以上の学習効果は望めないでしょう。
時事問題に興味を持つことの3つの利点
時事問題なんて定期テストでも入試でもそんなに大きな配点はないのだから無視していいのでは? こんな声も聞こえてきます。しかしそれは大間違い。時事問題に興味を持ち、「よく知っている」生徒は総じて国語と英語の成績もよくなります。それもそのはず、国語や英語で取り上げられる文章は、レベルが高くなればなるほど時事的になります。ある問題のフレームをあらかじめ知った上で文章を読む生徒と全くの初見の生徒。どちらの生徒の点数が高くなるかは想像できるはずです。
また、時事問題に詳しくなるということは「大人になる」ことでもあります。学校と家庭しか世界を知らない生徒よりも、大人の社会をおぼろげながらも知っている生徒の方が当然精神年齢は高くなりますね。この「精神年齢」はいろいろなところできいてきます。自分を客観的に見つめて弱点を把握し、それを解消するための長期計画を作り実行する。こんな「大人な」行動は精神年齢が高くなければ不可能なのです。そんなわけで、時事問題に興味関心を持つことには3つの利点があります。
- 定期テスト・入試で高得点をとれる
- 英語や国語の長文読解に役立つ
- 精神年齢を高める
時事問題を子どもに定着させる方法
そんなわけで、社会の講師として、時事問題に興味を持ってもらえるようこれまでいろいろな試みをしてきました。授業の工夫は当然として、新聞を読ませて生徒が気になった記事を切り取らせたり、プレゼンをさせたりと授業内外で様々です。学校の先生方も苦労されているようで、宿題で同じような内容がよく出されるようです。
しかし、結論から言うと、どんな工夫もあまり効果がないというのが本当のところ。生徒の元々の興味に沿った話題、たとえばサッカーをやっている生徒にとってのワールドカップのようなものであれば、単発で生徒は関心を示しますが、あくまでもそれは単発です。部活やら友人との交流やら日々の生活に紛れて、いつしか時事問題は忘れられていくのです。
つまり、時事問題への関心を持続させるためには時事問題が日常になっていなければなりません。これはもはや学校や塾での対処を超えています。日常生活の中で常に触れている必要があるのですから。そんなわけで、時事問題をよく知っている生徒は、話を聞いてみるとたいてい家での会話の中で時事問題が取り上げられているのです。
そうはいっても、いきなり子供に「今回のVWの排ガス問題は~~」と語りかけたところで、反応はとても鈍いものになるでしょう。学校や塾であれば、生徒は自分に興味がない話題であっても「勉強」として聴かなければなりませんが、家ではその拘束力は働きません。それを無理に聴かせようとすれば、家族団らんの時間はたちまち「お勉強」の時間になり、生徒はたちまちそっぽを向いてしまいます。
家庭における時事問題の扱い方
ではどうするか。
生徒「以外」の人同士、たとえば夫婦で語り合ってください。出来事の内容とその重要性を話してみましょう。その際は意図的に「生徒役」と「先生役」を決めておくと効果的。誰もが知っているようなニュースを語る場合でも、他人から質問を受けるとなかなかうまく答えられないものです。「なんとなく」分かった気になっていた部分に気づき、そこを調べてみると、今度は自然と人に話したくなるはず。
さらに、気をつけるポイントは「驚き」です。ただニュースのあらましを話しても結論が分かっていて面白くありません。私が授業を組み立てるときによくやるのは、別の分野の問題とテーマとなっている問題を無理矢理くっつけてみるやり方です。高校入試や大学入試の傾向からすると、だいたい「環境問題」あたりとくっつけることができればよいでしょう。「オリンピックエンブレム問題」と「環境問題」はどうつながるか? 「安保法案」と「環境問題」はどうつながるか? こんな切り口を考えてみると、結構面白いストーリーができあがってきます。話の規模もより大きくなり、話があちこちに飛びます。そして、ある特定の問題のみを扱ったときよりも「オチ」がつきやすくなるのです。
もう一度念を押しますが、子供に語る必要はありません。子供以外のご家族で話しましょう。子供たちは聴いていないようでいて親同士の会話をよく聴いています。学校に行き、塾に通って学んでいるとはいっても、やはり一番身近で重要な学びの場は家庭です。
お父さんお母さん、算数の問題の解き方や単語テストのチェックではなく、時事問題をこそ教えてあげてください。親の強みである「社会人であること」を最大限に生かせるのは細々したドリルの解説ではありません。学校と家という閉じた狭い世界に生きる子供たちが「世界」とアクセスする窓は皆さんなのです。
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