教育研究所ARCS

最強な人とは「バカ」である

教育・子育て

つい先日某塾から依頼され「リーダーシップ研修」の講師として話をしてきました。

何でも教室長や幹部を集めて「リーダーのあり方」「リーダーとしてのふるまい」について説いてくれとのこと。

しかしそもそもリーダーとは何でしょう。

 私にリーダーを語る資格があるのかどうか分かりませんが、私がいつも強調することは同じで「人を引っぱっていくのがリーダーというわけではない」という点です。
他人をどうにかしようとする、他人に働きかけて目標なり達成したいことに向かわせるのがリーダーのあり方ではないということです。
「人がついてくる」とか「リーダーの指導のもと皆で何かを達成する」というのはひとつの結果であって、それを目指そうとすると失敗しやすいというのが私の考えだからです。

他者を引っぱろうなどと目論む前に、リーダー(この言葉自体あまり好きではないが)の立場にある人が心がけるべきは、自分がいかに全体に奉仕できるか考えなければならないからです。

これは、謙虚であれとか無私であれという道徳的な話ではなく逆に「強烈な存在感」を放つことで「この人についていけば安心だ」「この人に従えば大丈夫だ」という信頼感を与える人であれということなのです。

だから必ずしもリーダーは「グイグイ人を引っぱって行く」人でなくても良く、細かくアレコレ指示する人でなくても良いのです。ただ「この人といると安心する。大きな何かに包まれ見守られている気がする。」という存在感をかもし出していることが大切なのです。
「自由にやってもよい。それでいて失敗しても必ず守ってくれる」そのような思いをメンバーが共有できたとき、その人はリーダーとして認められたということです。

しかしその「強烈な存在感」とはどのようなものでしょうか!?

それは「リーダーとなって他人を動かそう」などという野心とは全く無関係なあり方であることだけは間違いありません。

オープンマインド、正直、バカの3点セット

じゃ、最強な人間とはどういう人なのかといえば私はこう考えます。オープンであること。正直であること。バカになれること。

オープンで正直でバカになれる人こそが最強であるということです。

つまり心を開かず、自分をさらすことに臆病で小利口な人の真逆ということです。
そして世の中は、オープン、正直、バカ(笑)という3点セットがそろった人間は圧倒的に少ない。なので成功しやすい。

プライドを高くして周囲に壁を築き、他者から身を守ろうと常に身構え、それでいて自分が変に思われていないか自分だけ損してないかとあたりを見回しながら常識のカラを破れない。そんな人が圧倒的に多いからです。
このような人を常識人と呼ぶとすれば、常識人は心をオープンに開き正直になることは危険だと考えます。自分を開放することは他者の侵入を許すことだと感じるからです。自分を守ろうとしているわけです。

しかし、やってみれば分かりますが自分をオープンにして正直に本音をさらけ出すことは、かえって多くの人を味方につけることができる最良の方法です。
なぜなら「自分とはこういう人間です」と明確に打ち出すことで、人は警戒心を解くことができるからです。自分をオープンにすることで嫌われることもありますが、誤解されるよりはマシです。

さらに「常識人」にとって残念なのは、失敗を恐れるあまり思い切った行動ができないことです。
「こんなことをして失敗したら大変だ」
「やりたいことがあるが上手くいかなかったら笑われるだけ」
「こんなことも知らないと思われたくない」
など、変なプライドと常識によって自らを縛り上げてしまう。
何かちょっとした行動でさえも、方法や手段他人の目を意識しアレコレ考え続けて結局大胆な行動に移れない。「世間」などという実体のないものに過剰に脅えてしまう。
そういう人に言いたいのは「あなたのことなど誰も見ていないし気にしていませんよ」ということです。過大な自意識はジャマなだけです。
考える人は行動できない(考えるだけで何かやってるつもり)というのが本当のところです。

その点、「最強な人」はいつでもその「常識」や「他人の眼」というハードルを超えて、やりたいことやるべきことに制限を設けず突き進むことができる。
というか、彼らには「常識」や「他人の目」などなぜそんなに気にするかわからないのです。
彼らにはそもそも世間の常識に基づいてわが身を守るために損得計算をするという発想自体が理解不能なことです。彼らは自分の知っていることやアイディアを惜しみなく人に与え、良いと思うことを実行し全体に奉仕することが好きです。

「良いこと」を実行し「目標」を実現するのに労をいといません。
彼らはよくこんな言い方をします。
「できない理由を探すな」「常識的に考えてムリというのならその常識のほうをかえてしまえ!」
「常識に従ってリスクを避ける生き方ってマジでリスキーだぞ!」

彼らは自分に正直に生きているという自負があります。誰に対しても壁をつくらずオープンに接していて、それが信頼や信用につながり人々が集まってくることを経験的に知っているので、他に依存することはなく自分の思うような生き方をしてもやっていける自信があるのです。彼らが唯一怖れるのは「自由に生きていけない」ことだけです。

常識や世間のオキテに縛られず損得計算しないことは、常識人から見れば「バカ」ですが、彼らは「自分の人生を好きなように生きている」という点でもっとも高い報酬を得ているといえるかも知れません。

その、高い報酬の一つとして「人が集まってくる」→「大きな成果を生む」→結果として「社会にも貢献する」ことが考えられるのです。

だからリーダーシップとは「最強な人」が自らの特性を存分に発揮したときにその過程で生み出される副産物のようなものといえるでしょう。

「振り返ってみたとき後ろに道ができている。」
優れたリーダーが何かを成し遂げるとき、常にそのような風景(新しい道)が広がっているものです。

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