教育研究所ARCS

子育ては親育て

教育・子育て

子育ては親育て

今回は子をもつお母さんたちへのメッセージとして次のことをあげたい。

よく母親がするカン違いのひとつとして、子どもを心配することが愛の証しという思い込みがある。成績や日頃の行動のアレコレを「このままではいけない。何とかしなくては」と心配し先回りして「ああしろ、こうしろ」とつい口やかましく注意し、そのことが子に対する親の愛の発露だと思い込んでいる人は多い。

だがこれは愛ではない。執着でありエゴである。厳しい言い方に聞こえるかも知れないがこれらは子どもを愛しているからではなく、自分の思い―観念や感情信念―への執着から生じている。つまり自分の思いへのこだわりである。

事実これらの「心配」は子どもに伝わっていない。少なくとも親の愛とは受け取られていない。むしろ親のエゴを感じている。

心配にもいろいろな種類はある。子どもが病気した、ケガをした、夜遅くなっても帰って来ないなどはどんな親でも心配になる。当然だろう。これは事実に基づく正当な理由のある心配だからだ。子も親の愛情を感じることができる。

しかし多くの親の心配は、たとえば子どもが勉強をサボっている→このままではテストで悪い点を取る→良い学校に行けないかも知れない→そうなったら将来よい職業につけない→不幸というように現在の問題と起きてもいない将来の不幸を根拠なく結びつけることから生ずる想像に過ぎない。

これら親の「ああすべき、こうすべき」という思いへの強いこだわりが子どもへの心配や不安焦りを生み出し子を追い詰めてしまっている。

子どもは親が心配し恐れをもつほど、かえって親を心配させる方向へと走り出してしまう。不思議だが本当だ。そうやって親の「誤り」を気づかせようとしている。

これを避けるためには次のことをまず自覚してみて欲しい。

親が思う子への愛→心配すること→執着→エゴではないかとまず自問してみることだ。
こうすべき、ああすべきという思い。先回りして心配することは本当に自分の真情から出ているものなのか。

それらはたいていは自分も親から言われてきたことをくり返しているだけではないのか。

あるいは世間の常識やルール、周囲の人々の話や他との比較によってそう思い込まされているだけではないのか。
よく振り返って考えてみることだ。

先日あるお母さんと話をした。
この人は数年来子どもの問題に悩み苦しんできたが、あるとき絶望のドン底で自分が「ああすべき」「こうすべき」を子どもに押しつけていてそれらは自分の親から子ども時代言われ続けてきたのだと気づいた。
さらに自分の心をのぞいてみると親の期待にこたえられなかった罪悪感のようなものがあることも分かった。

そうして子どもへの手綱を緩めると子どもの様子に変化が生じた。完全解決とまではいかないものの子どもの行状は改善しつつあるということで、お母さんの表情は晴れやかだった。
「子どもへの愛情だと思っていたけど全然伝わってなかった…」とお母さん。

このお母さんの気づきは、子への愛情と思っていた心配や強制は自分の信念(思い込み)や感情への執着であり、また「このように生きるのが社会的に得である」という打算的思惑であって肝心の子どもの存在そのものへの愛ではなかったということにある。

私は最後に「お母さん、今回のお子さんの問題に対していまどんなふうに感じていますか」と質問した。すると「感謝しかありません」という答えが返ってきた。
その意味は、子どもが問題を起こしてくれたことで親が自分の内面と向き合うことができたということ。結果大きな気づきと共に子どもに対する純粋な愛だけを感じるに至ったからだ。

「執着を手放せ」と多くの識者は説くが、執着とは必ずしも子どもなど他者を対象にするとは限らない。たいていは自分の思い―信じ込まされた信念、観念―への執着であり、どちらかといえば感情的こだわりなのだ。

先のお母さんのようにそこに気づけば早い。執着を手放すとは相手を突き放すことではない。自分を縛りつけていた鎖を解くことで自分と相手を解放し等身大の相手の存在を認めることにある。

そこに初めて真の愛情が成立するからだ。

いつも気づくことだが、子どもは問題を起こすことで親の問題―すなわちどんなこだわりをもっているか―を明らかにすることが多い。
だから親は発想を逆転させて「この子の問題は自分の抱えているどんな思い込みを教えてくれているのだろう」と内面を探るとよい。
必ず大きな発見があるはずだ。

子育ては親が子を一方的に庇護することだととらえる人が多いが、子どもを育てながら親も人として成長することができると考えれば子育ての恩恵はとても大きなものとなる。
親も子によって育てられているのだ。

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