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ルールを守るだけでよいのか

教育・子育て

ルールを守るだけでよいのか

前回の動画(長老カフェぶっちゃけ教育トーク第4回後編)で私たちは「ルールを守る子は伸びない」という話をした。

これについて色々な感想や意見が寄せられたが、ひとつ誤解してほしくないのは「ルールを破れば伸びる」と言いたいのではない。オキテ破りが正しいことだと伝えているわけではないということだ。

ルールを守ること。それが、先生から言われたから親や上司から言われたから仕方なく守るというなら単なる受け身であり、物を考える姿勢ではないと言いたいのだ。

さらにそういう態度は「上の人が言ったことはちゃんと守ってますよ。それが何か?」という無責任にも通じがちだと指摘したかった。

ルールをあまりにも強制すると人は受け身になり自分で判断する力を失う。その結果そのルールは何のためにあるのか肝心の背景的理由を考えることもせず、形だけ守ろうとすることでかえってルールのもたらす恩恵を得られなかったりするからだ。

たとえば交通信号。赤だと止まる。青だと進む。
多くの人は横断歩道で赤だと止まり青になると漫然と渡り始める。中にはスマホを見ながら渡っている人さえいる。
しかし言うまでもなくこれは危険だ。たとえ青信号でも車が必ず停まってくれるとは限らない。暴走車もいるし運転手の見落としもあるからだ。

そもそも「青」は渡れではない。注意して進めという意味だから注意して―左右をよく見て―進まなければならない。

信号を始めとする交通規則(ルール)は何のためにあるのか。

当然人間の生命を守るためであり、スムースな交通の流れを維持するためであろう。
形式主義的に守ってもかえって身を危険にさらすなら、何のためのルール順守なのかということ。もちろん交通規則を破れと言ってるのではない。

「決められたことさえ守っていれば安全」は決して安全ではなく、場合によっては危険な考え方だと言いたいのだ。

社会のルールそのものが変わった

教育現場でも同じことが言える。
私たち教育者が共通して感じることも教わったことに何の疑問も持たず、ただ板書を丸写しで先生の言ったことをうのみにする者は結局伸びないのが現実だということだ。

「何をもって伸びる、伸びないを定義するのか」と言うなら自分で物を考えられるかどうか。それと複数の解決策を提示できるかどうか。そのためには疑問をもつこと、すなわちクリティカルシンキング(批判的思考)ができるかどうか。そしてもっとも大事なのは従来の常識やルールにとらわれず、新しい枠組みを創造的(クリエイティブ)に考えられることである。

特にこれからの時代社会で活躍し、また幸福な人生を送るためにもこのような資質は欠かせない。

確かにひと昔前までなら「上から言われたことだけ守ってればいい」という姿勢でも通用したかも知れない。高度成長期のようにどこの企業でも同じようなモノを大量生産すれば売れていた時代なら、定型的な働き方つまり型にはまった思考の持ち主のほうが下手に疑問をもつ人間より使い勝手が良かったかも知れない。なまじ批判的精神など邪魔でしかないからだ。

学校教育もかつては批判的にモノを考えるより、ただ一つの正解―解き方のパターンや教わった知識―をたくさんつめ込むことを奨励していた。

しかし様相は一変した。
今は「与えられたやり方」を覚えるだけの受け身な人間は必要とされない(職種によっては必要かも知れないが)。

つまりルールが変わったのだ。

先日のニュースで日本を代表する大手銀行が、今春採用する新入社員から能力給を導入したとえば金融工学の専門知識をもつ者などを対象に、場合によっては年俸1千万超の待遇を与えるという。新入社員の平均年俸が3百万程度だから入社時点ですでに3倍以上の開きが生じることになる。

それより少し前になるが、やはり経済界の重鎮と大手自動車会社の社長がそろって記者会見し「年功序列とか終身雇用はもうあり得ない」と断言する様子を見た。

大きな会社に入れば安泰。そのためには有名校を目指す。そのために無批判に覚え込む勉強。今やそういった古い常識の終焉であり既存の価値観やルールの大幅な変更を迫られている。

ルールを超える人こそ実力者

教育現場でアクティブラーニングが導入されたり、大学入試が形式内容ともに大きく変化しているのもその一つの表れにすぎない。
すべては急速に変わりつつある。

働き方。教育のあり方。社会の求める人間像。幸福についての基準。何よりも人間の生き方そのものが問われている。
コロナ禍はこの変化の流れを加速させるだろう。

間違いなく言えることは、これからは個人の実力だけが物を言う時代であるということ。権威ある者や古い常識やルールに従っていれば安全と思ってる人はとり残されるだろうということだ。

さて、色々述べてきたが要するに私たちが言いたかったのは常識やルールというものは常に変化するということ。一定の時期、一定の場所で有効だったとしても時と場所が違えば無効になったり、危険になり得るものと理解しなくてはならない。

もちろん時間と空間の試練を経ても変わらぬルールはある。昔から伝えられている格言などには普遍的な真理を含むものが多いし、人として従うべき道徳的倫理的基準もある。

だが多くのルール(常識)は相対的なものに過ぎない。そして忘れがちなのは、ルールは人間のためにあるのであってルールのために人間があるわけではないことだ。
役に立たなければ自由に変えることもできる。

常識やルールに盲目的に従うのではなく、ルールの有効性を知りながらルールを超えることのできる人間。それこそが本当の意味で実力ある人間なのだ。

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長老カフェぶっちゃけ教育トーク第5回(前編)を公開しました!
「子どもを伸ばすために親がすべきことは?
第5回長老カフェ「伸びる親の特徴」〜前編〜」
是非ご視聴ください。

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