教育研究所ARCS

チューリッヒ美術館展から思うこと

教育・子育て

今年はスイスと日本の国交開始150周年にあたるそうで、スイス関係の展覧会が各所で開かれています。
これはいい機会と、六本木の国立新美術館で開催されている「チューリッヒ美術館展」に行ってきました。

平日だったこともあって、ほぼ混雑なし。近代から現代の絵画が中心で、ゴッホやモネなど超大物の名作が来ていることから、芋洗い状態を覚悟していたにもかかわらず、名画も立ち止まってじっくり眺めることが出来ました。
中でもかなりお気に入りのモンドリアンのコンポジションはついに実物を見ることが出来て感激しきりです。やはり実物は画集の写真とは色合いが微妙に違い、筆遣いの跡も残っています。
言葉にすると陳腐かもしれませんが、なにやら「本物のすごみ」を感じられるのです。
この「すごみ」を体感するためには、どうしても美術館に行かなければなりません。
入場料を払って「すごみ」を買った一日でした。

美術についてしゃべれるとカッコいい?

なにやら偉そうに絵のことを書きましたが、正直なところ、つい数年前まで絵画などまったく興味がありませんでした。ルネサンスや古典派の絵を見て「色が綺麗だな」と思う程度で、好きな絵など当然なく、どれも同じようなもの、そう感じていました。
その後私は絵を見るおもしろさに目覚め(?)ましたが、切っ掛けはよくある「ある絵と運命的な出会いをした」というようなドラマティックなものではありませんでした。
私が絵を見るようになったのは、至極打算的で、感性とはほど遠い理由からです。
それは、「美術についてしゃべれるとカッコいいと思ったから」。
興味がない絵画について「かっこよくしゃべる」ために「勉強した」のです。これは音楽も同じです。クラシックを聴くようになった切っ掛けも「クラシックを語れたらカッコいい」と思ったから。絵画にしろクラシックにしろ、最初の頃は苦痛以外の何物でもなかったことを覚えています。画集を見ては退屈し、クラシックを聴いては居眠りし、と、およそ感性による芸術鑑賞とはほど遠い体験を繰り返しました。
しかし、我慢に我慢を重ね、知識が蓄えられてくると、見るべきところ聴くべきところがおぼろげながらに分かってきます。すると俄然おもしろい! いつのまにか苦行は楽しみに変わっていました。

このように、私は絵も音楽も、感性で理解したというよりは勉強して知るところから始めました。よく「芸術は感じるもので勉強するものではない」と言われますが、私はこの考え方にはどうも賛同できません。
漫画やドラマのように「分かりやすく」作られていないものを、「感じる」には、とても強い感性が必要です。感性が乏しい私のような人間は、自然と感動を得ることなど出来ません。
しかし、知識を学び、補足することで今まで見えてこなかった世界がぼんやりと見えてくるようになります。私が勉強をとても「ポジティブ」に捉える理由はこの経験にあります。
英語や数学といった教科から今回例に挙げた芸術まで、その領域の仕組みや前提知識を学ぶことで、自分の生きる世界を大きく広げることができます。
日常の全てのことを「勉強」と捉えることができれば、こんなに楽しいことはありません。みなさんもいろいろな「勉強」を探してみてくださいね。

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