2020年の入試改革をにらんで、高校の授業や大学入試の内容が大きく変わっている今日この頃。教科単位で見たときに最も大きな変更があるものの一つが英語でしょう。
文法、長文を中心とした紙の上の勉強から、しゃべれる(使える)英語への転換を進めよう、というのは、もう何十年も前から言われてきたことです。しかし、実は高校の授業という「現場」(少なくとも、難関大学を目指す生徒の多い高校では)では、全くもって変化がありませんでした。その理由はとてもシンプル。大学入試の形式が「文法・長文中心」のまま変わらなかったからです。こう書くと、「大学は旧態依然としてけしからん!」と思われるかも知れませんが、ことはそう簡単ではありません。大学には試験形式を変えたくても変えられない事情があります。それは「人手」です。
少子化の時代とはいえ、大学入試は現在でもすさまじく大規模な試験です。人気の大学ならば受験者の数は何万人という単位。都内の大規模大学を受験しに行くと、校舎がある街全体が受験生であふれる情景には圧倒されます。そんな大人数の試験に「しゃべる」試験を加えたらどうなるか。CDを流せば済むリスニングと違い、スピーキングには会話相手である試験官が必要です。つまり、現在ごく一部の大学学部学科の「二次試験」でのみ行われている面接試験を全受験生に課すのと同じですから、たぶん物理的に大学がパンクしてしまうでしょう。
そんな状況(それ以外にも色々な大人の事情はありますが)を受けて、それでも改革したい大学が近年導入しているのが「外部検定利用型入試」。英検のような、大学とは関係のない機関が行った試験の結果をそのまま大学入試に活用できる制度です。これは一昔前の「英検2級を持っていたら英語で10点加点」という加点方式から一歩進んで、「英検○級を持っていたら英語の試験は免除」という置き換え方式になっている場合が多いようです。なかには上智大学のように、学校が独自に外部検定試験(TEAP)を作ってしまう場合もありますが、こうなると外部検定試験も責任は重大です。受験生の将来を左右する資格になるわけですから、クオリティの高い内容のものを提供しなければなりません。それもあってか、近年英検が問題形式を大きく刷新し、英語の4技能(読む・書く・聞く・話す)をバランス良く問うものに変わりました。
さて、この流れで割を食っているのが、従来の入試で最重要だった読解力と、読解力のベースとなる文法力です。二昔前の入試では、英語のネイティブですら理解できないような複雑極まりない構造を持つ英文がバンバン出題されていましたが、最近ぐっと減っています。アクロバティックな構造分析(SVOCをふるアレです)はあまり必要なくなりましたから、場合によっては単語の意味から類推するだけで長文を読み進めることすら可能になりました。
この状況は一般的に、「無駄な“勉強のための勉強”を廃して“生きた英語”を習得する」素晴らしいものと考えられています。
しかし、自身の経験から言えば、少し首をかしげたくもなります。というのも、実は私自身文法も構造分析もおよそダメ、単語量と類推だけで受験を乗り切ったタイプの生徒でした。大量の英文を「なんとなく」読み、大量の英語を「なんとなく」聞き、なんとなく答えを書いて大学に合格しました。その結果は…。
大学に入ると、読まなければならない英文は「教科書」ではありません。学者が書いたバリバリの研究書、論文であったり、レトリックの粋を極めた小説だったりします。そうなると、当然ですが「なんとなく」の類推など歯が立ちません。それまで「できる」と思っていた英語が学問的に全く使えないことを身をもって知らされ苦しんだ記憶は今もなお鮮明です。教授の「君の(文章解釈についての)意見には、本当に、全く根拠がないね」「根拠がなければ、それは君の思い込みだよ」という言葉は忘れられません。
そんなわけで、大学受験生の皆さんには是非、いわゆる「カビの生えたような」古くさい英文解釈を体験する機会を作ってほしいと思います。「こんなのまず使わないじゃん!」と思うかも知れませんが、実はいろいろなところで使い道がありますよ。
一方で、「使える英語」の重要性も心の底から分かります。実は来週海外出張なのに、英会話がうまくできないので今からおびえている私です。あれだけ英語を勉強したのに、と悔しい限りですが、自己紹介の台詞すらパッと出てこないのです。つまり、結論は、「読む・書く・聞く・話す」の四技能をバランス良くという現在の英語教育はやっぱり正しそうだ、というところですね。
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60歳になって英会話の勉強を本格的に始めました。息子が大学院に入るのにTOEIC600が必要で、英会話教室に入ったのに刺激されました。大学入試までは、英語は得意科目でした。それから40年、市場に出回っている殆どの教材を購入しましたが、日常の忙しさ〜言い訳ですが〜に、英語難民の状態で、人生最後のチャレンジが始まりました。たまたま去年自分も入った英会話教室の先生が、私の向学心を燃え立たせてくれ、聞き取れないリスニングをどう克服するか楽しく苦しい闘いにもがいています。あと2年後?このおばさんが英語難民から脱却できるか結末をお楽しみに!