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コレクター気質と暗記

教育・子育て

コレクター気質と暗記

2月も中旬に入り、大学入試のフィナーレを飾る国立入試が徐々に近づいてきました。この時期生徒たちは普通、やることがなくなってきます。過去問もやり尽くし、必要な問題集もやりきって、あとやれることはなにか、と考えると、残るはひたすら知識を詰め込む「暗記」しかなくなります。かくして最後の一週間、生徒たちは黙々と英単語や社会、理科の知識を覚えることになるわけです。

この「暗記」という営み、大学入試においてかなりのウェイトを占めます。2020年改革に備えて入試問題が思考力重視にふれているのは確かです。しかし、一般の印象と異なり、思考の土台となる知識の重要性は全く低下していません。むしろ、中途半端な「思考力重視」が生徒たちに浸透した結果、それがある種の言い訳として作用し、結果として黙々と暗記した生徒としなかった生徒の差が大きく広がる傾向すらあります。暗記を嫌がる生徒たちは大抵「暗記は苦手だから」といいます。しかし、暗記が試験で求められているならば苦手だろうがなんだろうがやるしかありません。にもかかわらず、「思考力重視」のイメージがその厳然とした事実を生徒の目から覆い隠してしまうと、「暗記は苦手だからやらず、思考力方面で頑張る」となるわけです。その結果はだいたい悲惨です。
生徒たちを数多く見ていると、確かに暗記が得意な生徒と苦手な生徒がいることが分かります。上に書いたように、得手不得手にかかわらず大学受験で暗記は避けて通れませんが、できることなら「得意」になりたいもの。そこで今回は暗記が得意な生徒の「傾向」について書いてみましょう。

コレクター気質を育てる

結論から書いてしまうと、暗記が得意な生徒の多くは「コレクター気質」です。趣味の物品を集めるなど物質的な収集もそうですが、場合によってはゲーム内のアイテム収集、レベル上げなどもこれにあたります。これらの生徒たちは、英単語にしろ理社の知識にしろ、覚えること=所有することという意識を持ちます。英単語を100個覚える必要がある場合、コレクター気質の生徒たちにとっては、「収集アイテムが100個ある」と感じられるわけです。一方苦手な生徒は「100個暗記分の無意味な労働」と感じます。つまり、知識を覚えることによって得られるリターンを「物」のように感じられるかどうかです。
私自身暗記は好きな方でしたが、振り返れば幼い頃から物を集めるのが大好きでした。小学生の頃から本を集めてみたり文房具を集めてみたり、成長してからは楽器やら時計やらを集めて喜んでいます。私が本格的に知識暗記に目覚めたのは高2の秋でしたが、そのきっかけはやはり、「アルファベットの羅列」から「一つの収集アイテム」へと英単語の見方を変えられたことでした。
コレクター気質は一般的に男性に多いと言われます。男性は大人になってもプラモデルを集めていたり、ゲームを集めていたりして、場合によっては夫婦間のいさかいのもとになることもあるようです。(奥さんから見れば)ガラクタを集めている夫にいらだちを覚えるという奥さんの悩みもよく聞きます。
ただ、上に述べたように一見やっかいな収集癖にも意味があります。もしお子さんにコレクター気質を感じたら、保護者の方はちょっぴり後押しをしてあげてください。ひょっとしたら暗記が得意な生徒に育つかも知れません。

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