塾講師をやっていて、保護者の皆さんからよく問われる質問に「子供が本を読まない」というのがあります。もちろん切実な悩みですから色々と対策を考えます。しかし、ふと冷静に考えてみると、なんだか無性に徒労感が…。
そもそも本を読むことってそんなに無条件で素晴らしいことですか?
見識を広げる、文章力を養う、論理能力を磨く。読書の効能を挙げていけば、それこそ山のように出てきます。でも、そのどれも「代替手段」があるのです。見識を広げるなら映像でもいいし、文章力を養うなら漫画でもいいし、論理能力を磨くなら算数の問題でもいいのです。読書の効能の最たるものである「想像力を養う」だって、別に絵画や音楽を鑑賞させれば済む話。
自分自身振り返ってみると、本はそこそこ読みましたが、上に挙げたような目的を達成しようと考えて読んだことはもちろん一度もありません。もっと言ってしまえば、本を読んだことで上に挙げた能力が身についたとも思えません。児童書から研究書まで、本なんてそんなものだと思いましょう。
何度も言いますが本の効能には代替手段が山のようにあるのです。
「本を読まない子供」は決して知的能力が低いわけでも知的好奇心がないわけでもありません。逆 に、「本を読む子供」がそれらの力をたくさん持っているというわけでもないのです。まずこれを前提として覚えておいてください。私は何年も塾で生徒に国語 を教えていますが、意外と数学が得意で本などほとんど読まない生徒の方が、文章の構造を把握する能力に長けているもの。
大丈夫! 思い込みは捨ててください。
それでも本を読ませたいなら
放っておいても子どもは最低限「本」を読みます。
どんな本を?
答えは簡単。教科書です。
塾で教えていると、生徒たちにとって学校の教科書は意外にも「エンターテインメント」であ ることに気づきます。あんな、いかにもつまらなそうな(そして実際、とてもおもしろいとは言えない)教科書の文章を、子供たちはやたらと鮮明に覚えている のです。大人の皆さんも覚えがありませんか?今でも、小学校や中学校で習った小説のストーリーを一本や二本話せたりしませんか?
教科書に掲載されている小説は、基本的にワクワクする内容ではありません。戦いも恋愛も性も丹念に描写から省かれています。ストーリーに起伏があることは稀で、はっきり言って退屈。
でも、子供たちは友達ととても楽しげにそのストーリーを話しています。
そう。ポイントは「話す」ことにあります。本を読み、その内容を他者と共有することが必要なのです。どんなに下らない感想でも、とりあえず話して盛り上がれば、発想はどんどん加速していきます。
ここに「本を読ませるヒント」が隠されています。大体において、親が子供に本を読ませる場合、それは押し付けです。「コレを読みなさい」と子供に本を渡したら、アフターフォローはしていますか?つまりその本は話題になっていますか?子供向けの本は大人が読んでもつまらない、そう感じるのならば、大人が読んで(つまり、親が読んで)楽しい本を子供に与えましょう。お父さんお母さんが読んで楽しかったから子供にも読ませるというのが本来の形のはず。
親が楽しいと思う本は子供には難しすぎて読めないのでは?
そう言われることもありますが、それこそまさに、子供の能力を見くびりすぎです。小学生でも中学生でも、何かをやろうと思ったらなんでもやります。
さらに、おとなになった皆さんは忘れているかもしれませんが、「背伸びをしたい」というのは、子供が抱く最も強い欲求の一つなのです。
子どもがどう感じるかなんて忘れてしまいましょう。
親である皆さんが中心です。
遠慮なく押し売りしてください。
そして、自分が楽しむために、本の内容を話題にしてほしいと思います。
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