今日はいつもと趣を異にし、優秀な人について話したいと思います。
優秀な人とはどんな人か。
優秀の意味にもよりますが、私はこう思います。
その人が置かれているポジションで要求されている能力(技能)を高いレベルで満たすことができる人間。
要するに仕事のできる人間ということです。
分かりやすい例ならスポーツ選手や芸術家、芸能人かも知れません。
たとえば野球選手なら打率とかホームラン数など数値で明快に示すことができます。
ピアニストなら人に感動を与える演奏、芸能人なら人気や芸の巧拙ということになります。
これら比較的その優秀さを客観的に証明できる人たちと違って、一般の人はなかなかその優秀さを明快にすることは難しい気がします。
というのは、普通は個人だけで仕事の成果をあげることは難しいからです。多くの場合チームを組んで複数で結果を出す。会社という組織に属しているなら尚更です。そして多くの人は会社という組織で仕事をします。
ここではいくら個人として優秀であっても、他者の協力なしでは高いパフォーマンスを維持することはできません。
つまり仕事をする上で一番大切な要素は、人間関係ということになります。
優秀な人はヒューマンスキルが高い
漠然と人間関係が大事と言っても、若い人にはなかなかイメージがわかないようですが、実際社会に出たら即必要となる能力なのです。
どんな仕事も良好な人間関係の構築なくして成果を上げることはできません。
そのために日頃から意思の疎通や信頼関係を築いておく。そうして初めて多くの人の協力が得られるからです。
私も30年以上会社経営をした経験から、真に優秀といえる人は例外なく他者の協力を取り付けることが巧みであると断言できます。
どの部署にいるかは関係ありません。営業であれ企画や開発であれ、広報であれ優秀な人は、頭の切れだけでなく自分のビジョンや考えを伝え共感を得ることで協力してもらう術を備えています。
しかし、その能力は口先だけうまければ良いというものではありません。
時には様々な利害関係や派閥など、人々の思惑や感情までも考慮し、調整しながら1つの目的に多数の人をまとめ上げていく力量が問われるからです。
誠意、情熱、無私(エゴの無い純粋さ)の精神、共感力さらには想像力や人間的魅力までも要求されるからです。
こりゃ大変だ!
多くの人はそう感じるでしょう。
そうなのです。こういう人はめったにいないのです。めったにいないからその優秀さが際立つのです。
個人的に能力の高い人はいっぱいいます。
しかし、いくら頭が良いとか学歴が立派といっても人間関係能力(ヒューマンスキル)が低い人は、なかなかうまく行きません。
仕事でつまずく人は、この人間関係を調整できず他者の協力を得られないからです。
「あんなに頭が良いのにもったいない…!」
何度そう思ったことか。
要するにヒューマンスキルが低いばかりに、せっかくの才能がいかせない。そういう人は想像以上に多いのです。
学校秀才つまりペーパーテスト的学力だけでは社会に出てから苦労する。
簡単に言うとそういうことです。
思春期こそ人間関係で悩め
ところで、それならこのヒューマンスキルをどうやって身につければ良いのでしょうか。
先にあげたようなヒューマンスキルの要素は、社会人になってから苦労して身につける人もいますが、できるなら若いうちにその土台となる体験を積ませてた方が良いと思います。
ここでカギとなるのは…やはり思春期(小学校高学年~高校生)までの時期「どれほど人間関係で苦労したか」ということになります。
ここで私事ですが、私が経営者として「失敗の多い」スタッフに投げかけていた口癖があります。それは「中学時代部活とか生徒会役員とかで苦労したことあるの?」というセリフでした。
彼らの答えはたいていNOでした。
中には部活そのものをやっていない者もいます。
「だから今そのツケを払ってるんだよ」
と私はお説教したものです。
もう1つ私事。私が中学生のときの担任の口癖はこうでした。
「うんと悩め苦しめ」
事実、この担任は私たちに様々な難題を課し私たちは素直に「悩み苦しみ」ました(笑)
真剣に悩み苦しんでいる私たちに、担任は「悩んでいるお前たちは美しい」と言ったのです。
当時は意味が分かりませんでした。散々悩ませ苦しめておいて美しい? この先生は意地悪なのか。ちょっとオカシイのではないか。
しかし今なら分かります。当時私は生徒会の役員で、運営上の悩みや役員同士の人間関係、顧問との板バサミなどで疲弊していました。
担任は全てわかった上でギリギリまで悩ませてくれたのです。
それらの経験が、社会人としての私にどれほど役に立ったかは計り知れません。年を追うごとにその思いは強まり、担任に対しても今では感謝しています。
思春期の「苦労」はまさに宝です。後の「成功の種」がいっぱい詰まっている。
さて、少しまとめてみます。ヒューマンスキルは社会に出てから人生の質を左右するほど大切な能力であり、それは思春期のうちに「体験」を通して身につけていくしかない性質のものであるということ。
だから親は、子どもが人間関係で悩んだり苦しんだりしていることをネガティブに捉えず「良い経験をしている」と温かい目で見守って欲しいのです。
以前のブログでも、我が子に「失敗させよう」(子どもにたくさんの失敗を経験させよう)とか「敷かれたレール」(本当に我が子を幸せにしたいなら…)という安全な道ばかり歩ませるなということを書いてきました。
子どもに失敗を経験させず、安全ばかりを選ばせ、勉強さえしてくれれば安心という親のあり方は、ヒューマンスキルを育てる観点からいえばかえってリスキーだからです。
将来子どもがかえって失敗しやすいと言ったのもそういう理由です。
思春期は悩み多い年頃です。
友だち関係、部活や生徒会での苦労、先生とのあつれき、気になる異性への思い。
親から見れば悩んでいる、苦しんでいる我が子の姿は忍びないものがあります。
でも、安易に同情せず突き放すでもなく、ただ温かく「今の我が子はまさにヒューマンスキルを学んでいるのだ」と見守ってください。
そしてもしできるなら、その姿を美しいと感じてみてください。言葉に出さなくても良いです。
親がそのように視点を変えたら、きっと子どもにとって大きな励ましになるでしょう。
[…] ると話しました。(学力よりヒューマンスキルこそ育てたい) […]