教育研究所ARCS

音楽から広がる世界

教育・子育て

音楽から広がる世界

突然ですが皆さんはクラシック音楽、お好きですか? こう聞いて最も多い答えは、「好き」でも「嫌い」でもなく、「特に好き嫌いなし」だと思います。J-POPやロック、R&Bのようなジャンルであれば、「好き嫌い」がはっきりするのでしょうが、クラシックの場合、それ以前に「興味が無い」あるいは「分からない」となることが多いようです。その理由の一つとして挙げられるのが、「聞き所」の分かりづらさでしょう。楽譜が読めたり楽器を弾けたりしない限り、クラシックの曲は耳障りよく流れていくだけです。オペラや歌曲以外は歌も入っておらず、「サビ」もありません。ですから、意識していないととたんにBGMと化してしまいます。さらに、演奏される曲は基本的に何百年も前に作曲された定番ばかり。新曲が出ることはあまりありません。

このような難点にもかかわらず、クラシックのCDは毎月山のように発売されています。すごいときには、たとえばベートーヴェンの交響曲5番『運命』だけで5枚も10枚も新規発売されるのです。これは当然、指揮者とオーケストラの組み合わせが異なる新録音なわけですが、あまりクラシックを聴かない人にとっては、5枚のCDすべて同じように聞こえてしまうでしょう。

私がクラシックを本格的に聴き始めたのは中学生の頃です。そして、聴き始めるきっかけとなったのが上述した疑問でした。AというCDとBというCDのなにが違うんだろう。これが知りたくて、同じ曲を二枚買って聞き比べてみるのですが、なかなか分かりません。しかし、曲を覚え、何度も聞き返すうちに、テンポや各楽器の音量など、微妙な違いが浮かび上がってくるようになりました。すると俄然おもしろくなってきます。自分の理想の演奏に近いものを探して、大学時代などは毎月何十枚もCDを買うようになりました。(クラシックのCDは基本的にはとても安いのです)。

かなりどっぷりクラシックにはまるようになったにもかかわらず、相変わらず私は楽譜が読めません。しかし、楽譜が読めない一方で、クラシックにまた別の楽しみ方を発見しました。それは、「歴史」です。

クラシック音楽は、17世紀、18世紀の西欧教会音楽からスタートし、王や貴族の宮廷で娯楽として享受されたのち、19世紀には上流市民に公開される「芸術」となりました。その変化の過程は西ヨーロッパの近代史そのものであるといえます。たとえば、チャイコフスキーのオーケストラ曲に「1812年」というものがありますが、これはナポレオンのロシア遠征を題材にした曲です。ロシア民謡の旋律とフランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」が交互に流れ、変奏を繰り返しながらフィナーレに突入していくという構造は、当時の歴史をある程度知っていれば「ニヤリ」とできるものです。このように、クラシックは音楽でありながら、その背景に分厚い歴史を秘めています。第二次大戦敗戦間近のドイツで演奏されたベートーヴェンの第9(大晦日によく演奏されているあれです)の録音など、当時の状況を知っていれば鳥肌ものでしょう。

「社会なんて勉強しても何の役に立つのか」。そう言われたことも何度かあります。もちろん数学に比べれば頻度はすくないでしょうが…。たしかに、1453年や1789年など、年号を覚えていなくても生きていくことは可能です。なんの不自由もありません。しかし、音楽一つとっても、深く楽しむための切っ掛けとして社会の「学び方」は有用です。クラシックに限らず、ロックやR&B、ヒップホップ、J-POPに至るまで、意外なところで意外なようにつながっているのです。お子さんが社会嫌いなら、ぜひお子さんの好きな「なにか」の歴史を掘り返してみてください。必ずどこかでつながっているはず!

400 views

今後のご案内

開催日: 2024年12月15日(日)

大人のためのオモシロ教養講座 12/15㈰開校

大人だからこそ楽しく学べる! 子どもとの会話も弾む! 新しい出会いも生まれる! 子育て・仕事に励みながらも自分だけの学ぶ喜びを感じる空間。 そんな学びの場があれ…

お悩み相談室

子供に「だんだん苦手な教科が出てきたが、どこがわからないのかがわからない」と言われた

子供に「だんだん苦手な教科が出てきたが、どこがわからないのかがわからない」と言われた

最初から核心を書いてしまうと、この台詞には二つの意味があります。一つ目は「(ある単元、分野の説明を)一回聞いたが頭がこんがらがったので、(面倒くさいから)あきら…

中学受験が子どもをダメにする

「本当の学力」を望むなら、親は思い込みを捨てなさい。

ついに管野所長の書籍が発売となりました。講師歴35年以上、長年の教育実践の経験を1冊の本にまとめました。中学受験を検討中の方、子どもに本当の学力を望む方はぜひ読んでいただきたい書籍となっています。

ご購入・Amazonレビューはこちら

コメントはお気軽にどうぞ

メールアドレスは公開されませんのでご安心ください。
また、* が付いている欄は必須項目となりますので、必ずご記入をお願いします。

内容に問題なければ、下記の「コメントを送信する」ボタンを押してください。

CAPTCHA