3月になりました。大学入試の世界では、先週の25日に国立大学の前期入試が行われました。まだ後期試験は残っていますが、ほとんどの生徒は25日で受験が終わります。昨年の夏以降、夜遅くまで残って勉強していた生徒達も、受験終了とともに一人減り、二人減り、25日を境に誰もいなくなります。高1、高2の授業を終えて教務室で一息ついたとき、何とも言えずセンチメンタルな気分になりますね。生徒達の成長の思い出が頭の中をよぎり、不覚にも目頭が熱くなることも…。これは受験学年を担当したことがある先生であれば、誰しも思い当たるところでしょう。
受かる生徒、落ちる生徒
さて、今回は、受験終了を記念して(?)、受かる生徒・落ちる生徒について話してみたいと思います。長い間入試を担当していると、受かる生徒と落ちる生徒には、それぞれ共通する性質のようなものがあるように感じます。1年生、2年生の頃同じくらいの成績だった二人が、3年の受験ではくっきりと結果に明暗が分かれることも珍しくありません。では、その違いはどこから来るのでしょうか。
大学入試は「大人の入試」です。塾も学校もただのアドバイザーに過ぎず、主体は明確に生徒にあります。わたしたち講師は「こうした方がよいよ」とアドバイスすることはできますが、それを強制することはできません。本人がアドバイスを受け入れるかどうかは本人の自由なのです。
しかし、この「主体は生徒」という言葉は一見当たり前のようでいて、実はそれを心の底から受け入れるのが難しいものでもあります。生徒達は小学校、中学校と先生を「仰ぎ見て」きました。先生の言ったとおりにしていれば、少なくとも「悪いことにはならない」。そう体にすり込まれてきています。言ったとおりにやらない場合にも「言われたとおりにやるほうが”よい”」と考えています。ですから、生徒達は言われたとおりにやらない場合、「やったふり」をしてごまかすことになります。この呪縛は、我々大人が思うよりも強固なものです。大学入試の場合、この呪縛がよい方向に作用することはほとんどありません。自分で勉強の道筋を考えず、指示を求めるのみになった場合、最終的には破綻します。大学入試ではやるべきことが多すぎて、講師は細かいところまで指示を出すことができません。ですから、指示を待つだけだと、必然的に抜けが目立つようになります。そして、この「抜け」の多さが不合格に帰結してしまうのです。
定期テストで必ずよい点を取り、常に学校で10位以内に入っている、絵に描いたような優等生が入試で苦戦する理由はそこにあります。一方で、1,2年のうちは無軌道で好き勝手にやっていた生徒が全勝することもよくあります。
学校の先生、塾の講師の指示は、基本的には有用なものばかりです。しかし、それを何も考えずに受け入れる、あるいは条件反射的に反発するのは危険です。その指示は自分にとって必要なのか、自分の目的と合致しているかを考えるくせをつけてほしいと思います。そう考えるなかで、徐々に自分の「目的」が明確化し、課題が見えてきます。大学入試では「勉強法」が重要であるとよく言われますが、細かい教科の勉強法よりも重要なのは、この姿勢なのです。現在高1、高2のみなさんは是非意識してみてくださいね。
受かる生徒、落ちる生徒拝見して。
初めまして、自己不信と検索していた時こちらのブログにたどりついてて投稿いたしました。
現在3浪の息子育てていまして
予備校に提出する書類の性格の欄に自己不信と書いてあり、病んでるだな
ちなみに模試では、理系5教科偏差値70以下になった事無く常にA判定、本番では、全滅のありさまです。
頑固な所が災いしてうまくいかないとは、思うんですが
専門家の意見としては、どうでしょうか
3浪の父より
コメントありがとうございます。お返事が遅れてしまい申し訳ありません。
現在お子さんは3浪目とのこと。大学入試は生徒さんは当然として、保護者の方にも
多大な心労を与えます。お気持ちお察しいたします。
さて、生徒さんの状況ですが、偏差値70、模試A判定という数値から見て、医療系、あるいは
旧帝大を第一志望とされていることと思います。前者の場合には、学力的な部分よりも
面接などで不合格になってしまう生徒も多いので、そのへんの切り分けをする必要があります。後者の場合、特に理系では、本番に緊張しすぎて頭が完全に回らなくなってしまうパターンが多いようです。いずれにしても、お通いになられている予備校の講師と深くお話をして、「根本的な原因がどこにあるか」を明確にする必要があります。東大理三や旧帝大医学部以外であれば学力は足りていると思いますので、生徒さんは勉強よりも自分自身の心のそこに秘めた根本印を探していくことに重点をおいたほうが良いと思います。私はよく「なぜそうなったのか」と生徒に延々と原因を尋ねる(非難する雰囲気は一切出さず、機械的に淡々と)ことで、最終的に生徒が自分で答えを見つけ出すよう面談をしています。
また、浪人生活の消耗から、精神的に脆くなってしまっている可能性もありますので、お父様がどんどん介入してあげるのもオススメです。特に志望校については、保護者は明確に自分の意見を伝えることをおすすめします。納得するにしろ反発するにしろ、生徒が自分を見つめ直すきっかけになることでしょう。
教育研究所ARCS 庄本廉太郎