子どもがなかなか勉強しません。つい「勉強しろ」とうるさく言ってしまいます…親としてはどうすればよいのでしょうか。
回答者:管野 淳一
この2つは実は関連していません。子どもが勉強しないのは、部活で疲れているのかやる気がないのか、あるいはやる気はあっても今はとりあえず休みたいのか分かりませんが、
目の前の現象として「勉強していない」がある。それは事実なのでしょう。
しかし、その子どもも1年365日まったく勉強しないということはない。する日もあるでしょう。(もしゼロというなら連絡ください。重症です。)
少し冷静に考えてみましょう。
実際問題として、子どもは毎日学校で授業を受けている(すなわち勉強している)。その上で塾にも行っているかも知れない。
定期テストの前などは、あわてて勉強することもあるでしょう。(つまり親の目の届かない所で意外と勉強しているわけです)
だから決して何もしていないわけではない。
年間で総計するとけっこうな勉強時間にのぼるかもしれない。
なのに「子どもは勉強しない」と親が感じるのであれば、それは親が「これくらいは勉強するはずだ」あるいは「もう○○年生なのだからもっと勉強するべきだ」という暗黙の期待を抱いていて、子どもの実際の姿(勉強時間)がそれを下回っていると思うからに他なりません。
まず親が期待値を下げて客観的に子どもを見る
要するに子どもが勉強しないという思いは親の主観だということです。
図にするとこうなります。
(親の期待値)-(子どもの現実)=失望
しかもこの場合の「子どもの現実」も本当の「現実」というより、あくまで親の目から見た現実であって上で言ったように、親のいない所では案外勉強していたりするものです。
その上親は、こと勉強に関しては我が子を厳しく見てしまう傾向がある。
したがって子どもの「現実」は常に親の期待を下回るようにできているということです。
ですから親のまずやるべきことは、子どもに対する期待の水準を下げることが一つ。そしたら子どもに対する「失望感」や「焦燥感」イライラというネガティブな感情もやわらぐ。
そうすれば自然と子どもの姿も客観的に見えるでしょう。
子どもの姿を客観的に見るとどうなるのか。
何が見えてくるのか。
たとえば、親から見て「全然勉強しないんです」というその子が、塾などでは活発に勉強していて先生の評価が高かったりする。学校でも授業中の理解度が思ったより高いことが明らかになる。
そういう本当の「事実」が見えてきたりします。
そうしたら親はその「事実」をまず認めなければなりません。別に口に出して認めてあげなくてもよいのです。その「事実」を、つまり「ウチの子は人一倍勉強をサボっているわけではないのだな」とただ静かに思うだけです。
ただそれだけで子どもには伝わります。
これだけで子どもが何も言わなくても勉強するようになることはあります。
子どもは何といっても親に認めてもらいたいものなのです。親に認められることは、自分の存在そのものが認められたことを意味するからです。
もう一度言うと、1つ目は期待値を下げる。2つめは子どもを客観的に見て認めるということです。
勉強に関して親はいつも子どもに「不十分」というベールを被せて見ています。不足の眼差しで眺めているのです。
親にとって不十分でも、子どもは子どもなりに「勉噓しているつもり」だし「勉強しなければ」と思っています。
だから「十分ではないけど、まっソコソコやってはいるのだな」という親の認定が必要なのです。まずこの「認定」を与えてください。
つまり、マイナスをプラスにしなくてもよいからせめてゼロにする。マイナス評価をやめるだけでニュートラルに子どもを見ていることになるということです。
目先の点数より子どもの未来を伸ばすことを考える
さて次に親がやるべきことは、なぜ子どもに勉強しなさいと言いたくなるのか自分自身に問うことです。
勉強しなさいと言いたくなるということは、子どもに勉強してもらいたい。もっと成績を上げて欲しい。あるいは将来のために力をつけて欲しいと思っているからですね。
ここで問うのは親であるあなたの本心です。我が子が良い成績(テストや通知表)を取ることを望むのか、考える力や表現する力すなわち目先のことより、将来的に社会で活躍できるような能力を伸ばしたいと思うのか。どちらなのか。目先の点数なのかより長期的な力なのか。(どちらともと考える人が多いかも知れないが)
その違いによって子どもの将来も影響を受けるからです。
とにかく成績さえよければという人は要注意です。こういう親はテストの点数や通知表などでうるさく子どもを判定しがちなので、子どものほうも目先の勉強に走りがちだからです。そしてこのタイプの親は、えてして子どもが机に向かってさえすれば安心するので子どもはますます形だけの勉強、アリバイ的勉強に逃げてしまう。
毎日コツコツやるわりには伸びなかったりするのもこういうタイプです。
なので親のあり方としては、なるべく点数などの数値的データに一喜一憂するのではなく子どもが「どういう姿勢で勉強に臨むのか」に関心を向けること。
そのためには子どもの性格や才能という、その子らしさ、個性をみきわめ「この子はこういう性格で、こんな才能がありそうだからこの方向をススメてみようかな」と思ってみる。
たとえば、子どもが人と交わるのは苦手だし内気だけどモノを組み立てたり構造を調べたりすることは好きなようなら、将来技術系に進むことを想定して、理科の物理分野の勉強をすすめてみる。実際それが得意なら多少大げさにほめたり励ましてみる。
もちろんあまり誘導しないように戒めることは必要ですが、子どもの興味ある分野や得意な教科を深めるような情報を与えていくことは親のつとめではないかと思います。
先の例でいえば、大学の工学系の学習内容などを一緒に調べたりして子どもの興味関心を将来の「本格的な勉強」や職業につなげてみるのも方法です。
そうすると子どもの視野も広がり今やっている勉強が将来の、より興味深い勉強に必要なのだという自覚が生まれ、主体的に勉強に取り組む可能性が出てきます。
ただ「勉強しなさい」では、子どもは自発的に勉強しません。自発的にやらなければ形だけのアリバイ勉強になり、結局本当の学力はつかないのです。
以上、色々述べてきましたが、勉強に限らず子どもに何かやらせようとして親が「○○しなさい」と言うだけでは何の効果もない。それでも何か言わずにいられないならそれは、自分のフラストレーションを晴らすために言っているのだと自覚した上で言ってください(笑)。
それよりも親自身が自分のやるべきことに専念してください。身もふたもない言い方ですが、子どもに勉強して欲しいなら自分こそ勉強してください。
仕事面などでもっと効率の良いやり方を考えるとか、興味のある分野について色々調べるとか、何かやるべきことがあるはずです。
子どもは親の姿を見ています。親が自分のことを一生懸命やっていたら、子どもも自分のなすべきことをやるようになります。
こう考えれば答えは実はシンプルですね。
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