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なぜ男の子は何も話さないのか

学校のことを何も話さないのは心配ありません。
「ことばによるコミュニケーション」に対する男女の違いが大きく影響しているだけです。

回答者:管野 淳一

この疑問に答える前に男の側から女性に聞きたいのは、「女の人はなぜそんな細かいことまで話したがるの?」ということです。女性は子ども(小学生くらい)のときから実に日常の細々としたことや、自分の気持ち、相手の気持ちなど感情のヒダについても話したがり聞きたがる。

私たち男性(男の子)はむしろそのことがとても不思議というか疑問です。

つまりこういうことです。第一に男と女は「言語によるコミュニケーション」に対する姿勢が根本的に異なるのです。脳の構造的違いといって良いかも知れない。

男はコミュニケーションの手段として「言葉」を(女性に比べ)あまり重要視していないが、女性は言葉にすることで「そうよね。私たち同じ考えね。仲間よね♡」と意思疎通し、仲間であることを確認し合う生き物なのだ。常に「言葉」で確認し合わないと不安になる。(敵か味方か分からないから)

その点男は、伝統的に「言語コミュニケーション」より具体的な行動力(戦ったり、狩りをしたり、獲物をしとめたり、何かを創り出したり、一つのことに秀でたりすること)で評価されてきた歴史がある。

太古の昔、男たちは狩りや戦いにおもむき、女たちは女同士で木の実や貝を拾ったりしていた。そこで女たちに重要だったのは、それらの仕事中に色々な情報交換をしていただろうということ。女性同士のコミュニケーションにうまく入れなければ、自分だけ「食糧確保」の有益な情報を得られなかったかも知れず、とりとめのない話をたくさん交わしながら仲良くなっていくことはサバイバルという点で大切な能力だったのだろう。

男性は腕力や獲物を追う脚力、遠くの獲物を発見する視力など肉体的能力に加え、風向きや空模様で獲物がどこにいるかを察知したり武器を作ったり、次の戦略を考える能力、つまり知力のほうが優先されたのだろう。統率力なども重視されたはず。

このように男と女は役割分担しながら進化してきたわけで、男性が肉体的強靭さや知的能力を発達させ女性は言語能力を発達させてきた結果、女性に比べると男性の方が「ことばによるコミュニケーション能力」は発達していないということである。

男の子が「学校のことを何も話さない」のはなぜ?

上に述べた理由から男の子が「学校であった出来事を話さない」ことには特別の理由はなく、そのこと自体は心配することはない。

男は見たり聞いたりしたことを細々と説明する趣味(あえて趣味というが)はないのであって、よほど「事件」でも起こらない限り親にいちいち話さないのがむしろ普通である。

もちろん性格もあり、学校での出来事をかなり親に話す男の子もいる(実は私がそうだった)が、友人といるときや学校にいるときは普通に話すけど、それを親に話さないのが一般的。

母親は女性なので「どうして何も話さないの」と心配するが、「どうして話さないの」という疑問自体が女性特有の発想。

もう一つ話さない理由は、母親がいちいち「今日学校どうだった?」とか「何があったの?」と問いつめるような聞き方をする場合が多く、母親が妙に詮索していることを感じてそれがウザイのである。母親が細かいことを心配しているのがイヤで心配かけたくないから話さないこともあるが、基本的に男の子は「詮索される」のがキライである。

ただ、注意すべきことは普段あまり話さない子が、あるとき急に色々話し出した時。何か隠したいことがあるのかも知れない。

こんなケースがある。部活が楽しくなくサボり気味で仲間からも孤立。親に「部活はどうした?」と聞かれ「だって部員がイヤな奴多いし」とか「ことばの暴力を受けた」などと言って、暗に「イジメの被害者」を装うなど、自分に都合の悪いことをゆがめたストーリーに仕立て上げることもある。

親はこういう場合、我が子の言うことをうのみにせず他の生徒や親、教師から情報を仕入れ客観的に判断すべき。
このケースに限らず学校での我が子の様子を知りたければ母親の「本領」を発揮して、息子を知る同級生の「女の子の母たち」とママ友になっておきたい。

女の子たちは情報通である(笑)。そして娘たちは学校での人間関係など多くの情報を母親にも話している。(男の子と違って)
そのネットワークを利用して、ママ友とランチなどすれば「我が息子」の知られざる姿が浮かび上がる。

これはぜひオススメしたい。

「何も話さない男の子の問題点」

プリントを出さない、机に突っ込んだまま持ち帰らない、見せないは日常茶飯事であり親は大変だが、我々専門家からすると大した問題ではない。日常すぎて笑えるほど…。

「何も話さない子」で起こりうるトラブルは先にも言ったように、問いつめられるとイジメられてもいないのに自分を守るためにストーリーをでっち上げたり、逆に本当に何も話さないからと親が勝手に憶測で「イジメにあっているのでは」と騒ぎ立てて、問題を大きくすることがある。
これなどは子どもがどうのこうのというより、親の問題である。

もう一つ。最近多いのが、親の前では何でも言うことを聞く良い子なのに学校など親の目の届かないところで結構悪さをしている子。イジメなどにも加担している場合もある。もちろん自分の行状については一切親には話さず、当たり障りのない返事しかしない。

いずれも親に原因がある。対策というなら親が深く自らを反省し生き方(価値観や子どもに対する態度)を変えなければならない。子どもの問題ではない。

こういう親の特徴は以下の通り。

①自分も親から変に厳しく育てられ、他人や社会の目を意識しただけの表面的な正しさを身につけてしまっている。子どもに対しても幼い頃から表面的な礼儀を厳しくしつけているので子どもも親の前だけで良い子を演ずるようになりフラストレーションを外で発散させる。親子とも見つからなければ良しと考える二面性あり。

② ①のタイプが「分かりやすい偽善的」タイプとするなら、次はヒネリの入った偽善タイプ。

高学歴でインテリの親に多いが「子どもの自主性に任せている」「私は子どもに頭ごなしに強制はしない」などと言う人。それでいて勉強できて当り前、人よりちゃんとしていて当り前という考え。こういう親の子は「無口」というより親の妙な「自信の強さ」「圧力」に負けて自分に自信が持てず。自分の考えを明確に主張できなくなる。

③先にも触れたが、やたら詮索し介入するタイプ。
このタイプの母親は女性らしいといえばそうかも知れないが、学校であったことや何を思っているのかをこと細かく問いたださなければすまないので、子どもはウンザリしますます何も言わなくなる。そして心を閉ざし必要なことさえ言わなくなる恐れがある。

対策としては
①子どもを信じる
男は女ほどしゃべらないのは当り前と割り切って子どもを信じること。息子のすべてを知ろうとしないこと。

②子どもの方から話しかける雰囲気づくりを心がける
日頃から子どもの部活や学校での、大まかな(決して細かく知ろうとせず)人間関係や状況などを把握しておき、「○○君は最近元気なの?」「次の大会はどこと対戦だっけ?」など気軽に答えられる会話をする。
学校の話題や交遊関係で息子が進んで話すことにのみ関心を払い、オーバーなくらい興味深そうに楽しそうに合づちを打つ。

③話が合い、客観的にものを見るタイプの母親とママ友になる
これは女性お得意(笑)のネットワークづくり。これまた日頃から信頼できるママ友と仲良くなっておき、なるべく客観的な情報を仕入れておく。息子を取り巻く人間関係などはママ友から聞いた方が良い。特に女の子を持つ母親。
「お宅の○○君は誰々さんから告白されたそうよ♡」などと息子の女性関係(笑)など貴重な情報が入る。担任など学校の教師よりよほど信頼できる情報が得られること確実。

④メンター(師)をつくる
ここでいうメンターとは、親以外の信頼できる第三者で子どもに様々な教訓や人生で必要なことを教え導く人間のことである。
それは学校の教師であったり、塾の先生であったり近所の先輩や、時には年長の危ない(笑)オッサンであったりする。
いずれにしても子どもに適切な助言(アドバイス)や必要な方法を教えてくれて、子ども自身がその人格にひかれ深く影響を受けるような人物だ。
「そんな人は知らない」と思わず子どもの身近にいる、信頼できる人を探し当てその人を通じて親の思いを伝えたり子どもの本音を聞き出すことをススめたい。

「何も話さない男の子」に親がすべきこと

繰り返しになるが、男の子は(御主人と同様)コミュニケーションの手段として「ことば」で話すことは基本的に苦手。
女性のように「感情のヒダ」までも言語化する能力はない。まして女性のように一日に話すべきノルマ(笑)などありません。なので80~90%の男の子は何も話さなくても問題はありません。

従って母親がすべきことは

①「何も話してくれない」という心配は女性だからであって話さないことそれ自体に問題はないと知ること。

②男の子(夫も含めて)を「ことばで追いつめない」こと。
女性に「どうしてそうなの?」「ちゃんと言ってよ!」などと言われると男の子(夫も含め)は心を閉ざすか、暴力的になることがあるので、時には気持ちを察してそっとしておくことも必要。

③全てを知ろうとしないこと
男の子にも秘密はある。特に女の子のことや性のこと悪友などについては、男の子はそれなりに苦労して学んでいくことがある。そして母親には触れて欲しくない部分でもある。そのことを理解し心配ばかりせずあたたかく見守って欲しい。友人とのトラブルなども本人たちが解決すれば一番良い。親が全てを知る必要はない。また先にも言ったようにメンター(心の師)など信頼できる他人にそれとなく息子に接してもらえるよう心がけたい。

④安全基地であること
心配したり詮索したりは子どもに「お前を信用していない」というメッセージとして伝わる。それより、子どもが窮地に陥ったときは相談できるような母子関係を日頃からつくり上げておきたい。

そのためには家庭内が明るく、タブーなく何でも話せる雰囲気を心がける親子関係も大事だが、夫婦が常日頃から信頼し合い仲良く何でも話したりする姿こそが子どもに「この家は安心できる。安全だ。」という感覚をもたせられる。

子どもの行状を全て知ろうとしたりコントロールするのではなくまず親自身が円満な人間関係を築き、楽しい家庭を営んでいるかどうかが問われる。

この記事を書いた管野がアドバイザーを務める、「オンライン自律学習指導システム-エンライテック」では、勉強、大学受験にまつわる様々なご相談に応じています。どんなことでもぜひお気軽にお問い合わせください。
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