教育研究所ARCS

私立高校説明会2015のウラ側―ARCS3人衆による座談会

学校の魅力はプレゼンに反映される

池村:会の当日ですが、やはりというか足立学園さんはうまかったですね。

管野:そうだね。あれはうちのスタッフとの話の流れでああいうプレゼンになったということだけれど、そもそも良い材料自体がなければあのようには出来ない。

庄本:対談を読んでいる人はなんのこっちゃ…という感じでしょうから説明しておきましょうか。

足立学園のプレゼン風景

池村:足立学園さんは校長の寺内先生が若手の生物の先生を連れてきたんです。いま足立学年の中で一丸となって企業努力しているのは「授業改革」だと。魅力ある授業で生徒の知的好奇心を刺激することこそ学校の使命だというわけですね。で、実際にどういうふうな授業をやっているのか、その若い先生がパワーポイントを駆使しながら説明してくれたんです。

管野:あれはすごかったね。先生自身の話術もウマかったけど、内容そのものが魅力的だった。例えば山中教授のiPS細胞に関する英字新聞記事を和訳していきながら、様々な周辺知識に話題を広げていく手法なんかは、うちの塾でもやってほしいと思ったね。

庄本:管野先生が仰る通り、実際にそういう企業努力をしているという実態がなければそんなプレゼンが出来ないわけですよね。だから具体例の出てくるプレゼンというのはやはり見る方にも魅力は伝わりますよ。

池村:実際にそういう具体的取り組みをやっていれば、「それを伝えたい」という気持ちになるし話し手にも自信や熱がこもる。逆にそういう具体的なものがなければ自ずとプレゼンは表面的になる。つまり、ある程度は学校の魅力はプレゼンに反映されると思うんです。

庄本:確かにそれも一理あります。でもね、取材していると必ずしもそうとは限らないかなという部分もあるんですよね。

池村:といういと?

庄本:学校自体はそう悪くないのに、担当者が広報として素人だったりとか。そうなると、本当は魅力的に伝えられる部分があってもつまらなく聞こえてしまったり…あえてどこの学校とは言いませんが。

池村:あぁ、例のですね。確かにこの人事は適材適所じゃないなって思うこと、ありますよね。その先生が悪いわけではないのに。

管野:そろそろ学校自体も一般企業のような観点を持った方がいいよね。あとはどこの学校が印象的だった?

庄本:駒込高校さんでしょう!

駒込高校のプレゼン

池村:同意。私は実際に取材した人間として、純粋に生徒にススメたい学校だと思いましたね。まずコース制を敷いてはいるんですが、ライフスタイルが変わらないということ。完全に平等に扱われているんですよね。これは現役在校生に詳しく聞いたから本当だと思います。

庄本:進学校としても実績を伸ばしてきてますよね。そういうシステムで伸びてきているのは職員が同じ方向を向いているからでしょうね。

池村:あと、ゴリ押しはしない程度の仏教的習慣が、地味に生徒に浸透している印象を受けました。始業前に必ず合掌するなどは豊島岡の運針みたいなイメージかな。在校生にインタビューしたときも、「最初は面倒だと思ったけど、今は普通に思えるし自然に感謝の気持ちが出てきた」みたいなことを言ってましたし。

庄本:校長先生が個性的だからアンケートの感想も二分されていたところがあるけれど、学校としては悪くない選択肢だと思いましたね。

池村:あとはVS校(学校の先生は招かず、スタッフが2校を対決形式で紹介するコーナー)の一つだった本郷高校さんですかね。うちのスタッフが言っていたのがまさに私が以前から思っていたことで「先生の指導はとにかく動機づけに終始している」ということ。どうしても私立高校は進学実績を伸ばしたくて、やれ補習だ特訓だと上から与える指導になりがちなんですよ。それが私はあまり好きじゃない。

本郷高校のプレゼン

庄本:同感。先生の仕事って、いかに生徒のモチベーションを上げるか、ですから。最終的に自分の頭で必要な勉強ができなければ結果はついてきませんよ。

管野:なんか都内の高校ばかりじゃない。専修大松戸さんなんかはどうなの?

専修大学松戸のプレゼン

池村:特に面白いプレゼン内容ではなかったと思うんですが、なぜかアンケートでは割と好印象なんですよね。やはり今回来てくれた教頭の大和田先生にしても校長の小泉先生にしてもほんわかして人柄が良さそうだからでしょうか。

管野:うん、それはあると思うよ(笑)。以前、うちの塾クセジュの菊地先生が言っていたけど、専修大松戸の先生はみんな偉そうにしないって。とにかく人がいい。そういうのって意外と重要な要素なのかもしれない。

庄本:そうですね。ただしシビアな見方をすると、東葛飾高校や船橋高校をねらっていたような生徒が入学しているのに大学実績がパッとしないとも言える。そこが決め手に欠けるという声も多いですよ。

池村:でも逆に言うと、先ほど言ったような「上からガンガン与える」というスタンスでもないわけだから良い方向にふれることもできますよ。だから実際に厳しい突っ込みとして大和田先生に「(本郷のように)動機づけで上に引き上げる指導をして下さい」ってお願いしたんです。専修大松戸さんがそうなってくれれば、私は絶対にオススメ校にするんだけどなぁ。

管野:ただし、入試問題はどうにかしてほしいね。池村君が「入試問題にポリシーを感じない」って言ったことに対し「今年は難易度を上げる」って言ってたけど、難易度の話じゃなくて「こういう力を持った生徒がほしい」というメッセージ性の話なんだけどね。

池村:そこはなんとも…。後日の塾対象説明会でも「難しくする」というコメントがあったそうです(笑)。

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