教育研究所ARCS

【第1回】今どきの子どもたちって言うけどさ

塾長奮闘記

今どきの子どもたちっていうけどさ

「すぐキレる今どきの子ども!」「激増する少年犯罪!」

こういうことばってよく聞きますよね。新聞の見出しにもよく出るし、評論家とか、コメンテーターとかいう人達が、よく言ってますけど…。
でも30年以上小中学生と接していますけど今どきの子どもが理由もなくブチキレるという現象を見たり感じたりすることなんて全くないんです。

むしろ逆なんじゃないですかね。どういうことかって?
私の見る限り、むしろ子どもたちはだんだんおとなしく素直になってきているということです。私は高校教師を3年ほど、塾で教え始めて28年経ちますけど、10年前、20年前の子どもたちの方が反抗的というか感情をあらわにするし、ある意味暴力的だった気がします。
無論、素直でおとなしい=良い子とは限らないし、反抗的・感情的なのが悪い子ではありませんけども。ただ、今の子どもたちを大人、あるいはマスコミなどがまるで犯罪予備軍のように、また理解不能な存在として扱うのは問題じゃないですか。
このように子どもを「悪者」に仕立て上げるのは、今の大人たちが自分に自信を持っていないことの裏返しじゃないかと思います。
少年犯罪が増えているというのも、実は本当かなと思ってインターネットで調べてたんですけど、法務省と警察庁の統計ですね、そうしたらウソなんですよね。ぜんぜん増えてない。殺人事件など昭和30年代に比べたら激減しているんですよ。だから子どもを持つ親は安心して下さい(笑)。
いつも言ってるんですけど、親はもっと子どもを信用したほうがいい。マスコミや無責任な評論家の言うことなどに踊らされて、我が子を「もしやウチの子も…!」と疑うのは良くないと。むしろ今の親たちが子育てに自信を持っていないことの方が私なんかは心配です。これもまた世間が「家庭の教育力が低下した」とかうるさく言うから、ますます親は自信を失くすみたいな感じになっているのではないですか。

親の接し方の「光」と「影」

でも私、塾の講師、経営者として日常的に何百人もの親御さんと接していますが、親御さんも懸命に子どもを育てているし、どうすれば子どもにベストな環境を与えられるか真剣に考えておられるのがヒシヒシと伝わってきます。それに少子化の影響もあり、昔より子どもの教育に熱心な親が増えているのも事実です。
では今の親や子どもにまるっきり問題はないのかというと、ないことはありません。前述の通り、最近の親は昔と比べると教育に熱心で理解もあります。それに対し子供も素直で割に反抗的でない。これらは一見好ましいことのように見えます。
しかしこれが明るい光の部分だとすれば影の部分もあるんですね。子どもというのは本来、自分を押さえつける世間や大人に反発したり失敗を重ねながら成長するものなんです(まぁ、時にはそれが逸脱したり暴走してしまうことにも繋がるんですけど…)。それなのに失敗をあらかじめ避ける形で親が配慮し過ぎると、子どももまた冒険をしない、失敗を恐れるようになります。

今の子供たちの素直さ、おとなしさは言いかえれば物事に対して疑問や批判そして好奇心すら持てなくなっていることの表れにも見えます。これが影の部分です。

実はこのことが、「学力低下」にも繋がっている気がするんですね。

学力低下に関しては珍しくマスコミの言うことも当たっています(笑)。ただし全員が学力低下しているわけではありません。全体的に意欲―モチベーション―の低下が結果的に学力の低下を招いているんです。
ですけど特に悲観していません。子どもたちには無限の可能性があると信じているからです。こう言うと理想論に聞こえるかもしれませんが、30年の経験の中で私は実際に、子どもたちが見せる奇跡的な成長に何度も出会ってきたんですよ。

※2005年当時に書かれたものをそのまま掲載しておりますので、文中の年数が現在と異なる部分がございます。