教育研究所ARCS

【12月】受験のプロになれ

受験カレンダー

今月のテーマは「受験のプロ」である。受験のプロとは一体何だ。(プロの受験生=職業的受験生=浪人?まさか…)もちろんプロといっても職業のことではない。今の君たちは部活や生徒会、駅伝からも解放され、しかもただの中3生としてではなく、1ヶ月後に受験をひかえた純粋な受験生という立場にある。つまり受験生以外の何者でもないということだ。ならば外側から「受験生」というレッテルを貼られるのではなく、自ら受験生という存在になりきろうではないか。

たとえば毎年この時期マスコミなどが流す、正月返上でハチマキ(?)しめて頑張る受験生の姿とか、君たち自身近所の人や親戚の人から「受験生だから大変ね」とかけられることばの中には、同情やあわれみがこめられているが、そういう世間一般が押しつける「かわいそうな受験生」像を受け入れてはいけないということだ。

言っておくが君たちは「あわれな受験生」ではない。自分の目標に向かって燃えるような期待と努力を惜しまない「主体的受験生」である。ワンランク上の目標を目指すのは人間の人間たる由縁であって、受験に限らずいつの時代にも必要な姿勢である。目標に向かって努力することが人を成長させるのである。受験は「あわれな苦行」ではない。結果はどうあれ、懸命な努力は必ず成長という遺産を残す。

前号でも言ったが入試それ自体はあっけなく終わる。本当だ。私立など50分×3教科=150分で半日にも満たない。そして1月半ばには私立入試が始まっている。従って受験生として充実した勉強時間を純粋に味わえるのはこの1ヶ月ほどである。この機会(12月と冬期講習)に受験生としての大変さ、楽しさ、充実感をとことん味わいつくそうではないか。そのためにこそ「受験生である」ことを自覚し、受験生であることに徹しきろう。逆にそれができないと今までの努力も水のアワになるのだ。

受験生であることから逃げず、あわれな受験生像に眼をそむけ、受験生であることに誇りをもて。

それが「受験のプロ」「プロ受験生」の意味なのだ。

 3つの掟でこの1ヶ月を乗り切れ

3つのオキテ

 オキテ1  ガリ勉しろ! ガリ勉をこわがるな

まず最初の掟はガリ勉である。「これもやらなきゃ、あれもやらなきゃ」と考え、それだけですっかり疲れてしまっているのではないだろうか。

前号で言った「己の限界に挑戦せよ」ということばを思い出してほしい。限界ということは、今までやったことのないほどの勉強量、時間、集中力を使えということだ。1日4~5時間のガリ勉は当たり前。冬休み中なら楽に8~10時間(家庭学習のみで)は、それも集中してやるのでなくてはいけない。

このガリガリ必死でやるという気迫が今の君たちには全然欠けている。全然甘い。このままでは最後まで君たちの能力は潜在したまま、つまり開花しないで終わるだろう。後には激しい後悔が残るだろう。

この1ヶ月が最後のチャンスである。自分の勉強姿勢が甘いことを認めて心を入れかえるしかない。

あともう1つ。「ガリ勉をこわがるな」というのは、成績の良い子に特に当てはまる。「そんなに勉強しなくても、けっこう良い点をとってきた」というおかしなプライドが「オレはガリ勉じゃねえ」というポーズに結びついてすっかり地道で面倒な努力を避ける姿勢になって、そこから抜け出せなくなっているのだ。そういう「秀才君」に警告しておく。ポーズをとっている場合か!そんな奴は入試直前1ヶ月で一気に(アッという間に)大勢の人に抜き去られるぞ。そうなのだ。この時期のガリ勉が直前での大逆転につながっていることを知らなければならない。

つまりガリ勉を避けている者は勝負を避けている(本気で戦って負けたらシャレにならないから)と言える。だからガリ勉を恐がらず、謙虚に努力しなければならないのだ。

 オキテ2  戦略思考を取り入れろ

本番が近づいているのだから、本番で点をとることを意識して勉強の時間配分解く順番なども考えなければならない。確かに数学などは、ハマってしまうと1問に何時間もかかったりするが、本番でこれをやると受からない。やはりこの問題なら何分ぐらいと見当をつけて、時間がきたらいったんはやめて解答解説を読むことも必要だ。

私立の問題などは解けなくても構わない捨て問があるので、どれが捨て問か見当をつけるズルさも肝心である。ただ英語などは長文2題があるとして、長くていかにも難しそうなのが実は基本問題で、短い文の方が捨て問のことも多いので注意しなければならない。

こういうことは塾の秋期特訓や授業で問題を解く際、常に意識していなければならないことだ。漫然と受け身(やらされている感じ)でやっているのとでは本番で大きく差がつくと知って欲しい。戦略といっても難しいことではなく、塾でも家でも勉強している瞬間は、『本番ならどう解くだろう』といつも実際の入試を想定しているかどうかにかかっている。

ただ長く机の前で何となく問題を解く、読んでいるだけでは、この時期あまりにも情けない姿と言わざるを得ない。

 オキテ3  自己暗示をかけろ

いくら勉強しても「受かってやる」という意思がなければ、「仏つくって魂入れず」に等しい。最後は受かりたい気持ちの強さが決め手になることは多くの例が示している。むろん結果は誰にもわからない以上合格を信じるしかないのだが、長年受験生を見ているとうまく自分を合格へと導いていく自己暗示に長けた人と、実力はあるのにウジウジとまるでわざとのように自分を不合格の方向へもっていってしまう人がいる。

言い古されたことばだがプラス思考のできる人はやはり合格しやすいと言える。プラス思考とは簡単に言ってしまえば、楽天的思考、悪く言えば自分を実際より高く評価するズウズウしい発想のことだ。もちろん全然勉強しないのに受かると思い込めというのではなく、同じ実力なら「受かる」と思いこんだ者が有利なのは確かだ。

では自己暗示でプラス思考するにはどうすれば良いか。自分が合格している姿(友人と喜び合っている姿、家族から祝福されている情景など)をイメージ(想像)することだ。コツは寝る直前のリラックスした状態、朝起きた直後など5分かそこらでよいから毎日続けることだ。何だそんなことかと思う人がいるかもしれないが、これが意外と難しい(すぐやってごらん)のだ。

1つの映像をありありと30秒以上思い浮かべられたらスゴイ。すぐに雑念がわく。もしそうなら、そのイメージを連想させる暗号文字を自分で作るのが良い。「合格」でも「やった」でも「ポチ」でも構わない。自分にしか通じないものでよいから、その言葉を口にすれば、映像が浮かぶようセットで覚えておく。特にオキテ1、2に従って毎日、身心がくたくたになるまで勉強し、その充実した心地よい疲れの中で眠りに落ちる寸前に、合格して喜ぶ自分の映像を鮮明に思い浮かべるようにしよう。

以上3つのオキテを守って残り1ヶ月プロ受験生として必死で努力して欲しい。そうすれば冬期講習が終了し、最初の受験を迎える頃、そこには今よりも輝きを増し成長した君たちの姿があるだろう。

贈る言葉

受験は現代では数少なくなった成長への通過儀礼である