教育研究所ARCS

【11月】”孤独”になって実力をつけよ

受験カレンダー

今月のテーマは“孤独になれ”だ。孤独ということばは1人ぼっち、さびしい、という否定的なニュアンスで用いられがちだが、反面他人と群れず妥協せず、主体的に我が道を行くという肯定的意味合いもある。今月から君たちは孤独になる必要がある。つまり他と群れず、妥協せず、主体的に自分の目指す道を進むという必要である。

何故なら、勉強は結局1人でやるものだからだ。そして受験も1人で受け、結果も1人で受け入れるものではないか。この意味をよく考えて欲しい。誰かが君の代わりに勉強したり、受験してくれたり、結果を喜んだり泣いたりしてくれるだろうか。たとえば友達と「○○高校に一緒に行こうね」などと話しても、それは各々が頑張って勉強して、運良く2人とも受かったらという話でしかない。受かるまでは、受かるために各人が必死でがんばる他はない。自分だけが落ちるのが嫌であればその間孤独に耐えてがんばるしかないではないか。

ここで「勉強が進まない」「やる気がしない」という人がいたとして、誰か手を休めてつき合うという者がいるだろうか。1人もいないだろう。結果は全て自分1人で負うしかないのが受験である。合格か不合格は自分1人で背負うしかない。ならば結果に至るプロセスをどう進むかも自分1人の作業であり、努力であり工夫であって、他のせいにはできない。

では孤独な努力とはどういうものか述べよう。

敵は他人ではなく自分である

1.自信をもて

現在の君たちは夏頃に比べて間違いなく実力がついてきている。「いや、テストの点(偏差値)が伸びていない」という人もいるだろうが、他人との比較ではなく過去の自分と比べての話である。今塾の授業や秋期特訓では入試問題演習を行っている。つまり点の取り方を学んでいるわけで、そういう意味で君たちの得点力は数ヵ月前の自分より伸びている。

しかし実際の模試では結果として出ていないし、自分の実感としても伸びているように思えないだろう。それは全体が少しずつ伸びているから、実力はついている(過去の自分より)のに、眼に見える数字となって表れないのである。これは確かにけっこう辛い。しかもこんな状態が入試直前まで続くのである。

だからこれに耐えなければならない。今自分のやっている勉強は確実に力になっていると自分を信じること、これが一番大切である。自分を信じて、授業や特訓に何となく受け身で「出ているだけ」という姿勢ではなく、この瞬間瞬間を、今まさに自分の血肉(実力)となっていると感じながら「参加すること」だ。これには想像力が必要である。「今この瞬間が血肉となる」を鮮明にイメージできるかどうかだ。人間の脳は実際の力の数十分の一しか活用されていないというのが定説だ。君たちの能力は潜在的に今の何倍もある。十分活用すべきだ。

2.自分の限界に挑戦せよ

勉強は1人でやるものだと先に言ったが、その意味は学校や塾の授業も、テストもそれ自体は「ただ受けている」だけでは力にならないということでもある。授業は聞いているだけではしようがない。あくまで自分の勉強の成果を試す場であり、チェックする場でしかない。メインは自分の頭と手を使って読み書きしたもの、つまり「汗をかいた」ものだけである。力がつくという場合、この汗の量、苦労に比例して力がつくというのである。

逆に1人で(孤独に)勉強している者にとってのみ、授業やテストを有効に活用することができるのである。だから家庭学習、課題をいかに誠実に苦労してやるかがこの時期重要なのである。課題や宿題を通して自分の欠点が浮かび上がる。(浮かび上がらないのなら、ただ機械的、受け身的にやっているに過ぎない。)

その自分の欠点=真実をしっかり見極めなくてはならない。自分はどの分野でつまずくのか、どういう間違い方が多いのか、背景として何が欠けているのか、まずそういう自分の真実をごまかさず、しっかり見通してみよう。そうすれば残り数ヵ月で、どういう対策を立てるべきか自ずと浮かび上がる。もう1度言おう。どうすべきか自ずと浮かび上がるのだ。先生に頼ったり、何々勉強法にすがったり、友達に相談する性質のものではない。(そういう人は望みがない。すぐに反省しよう)

孤独に徹し切って、真剣誠実に己をごまかさなければ、何をどう勉強すべきか見えてくる。こうなればしめたもので、後はその信じたやり方で押しきっていくだけだ。自分の限界に挑戦するつもりでガンガン突き進もう。そういう中で疑問が出てきたら、初めて先生に聞いたり相談しよう。あるいは友達と合格後の夢を語り合おう。それは孤独な受験勉強の支えとなるだろう。

3.自己不信の妄想をつき崩せ

受験生は自己不信に陥りやすい。「もし落ちたら」とか「いくらやっても伸びないのでは」という懐疑や不安にとらわれやすい。前にも言ったが、これは自己不信からの逃避現象なのである。傷つく自分が恐くて、土俵に上がる前に勝負そのものから下りてしまおうという心理である。これは現実の勝負は一瞬で決まり、そこには本当の意味での苦や快はないのだが、あらかじめ想像することで実際以上の恐怖や苦痛を見てしまうのが原因である。

だから根底には自己を守ろうとしすぎる気持ちがあることを見抜き、また守ろうとするのは自分に力がない=負ける=傷つくという自己不信にとらわれていることを知るべきだ。ここから脱出する方法はむしろ孤独に徹して自分の弱さ(学力がまだ不十分なところ)を冷静に悟るしかない。考えてみて欲しい。学力の完璧な受験生というのは存在しないのである。皆不安を抱えながら試験場に行くのである。

中途半端な孤独感が不安を大きくし、逃避させているのである。孤独に徹して「誰も助けてくれない。自分の実力は自分でつける」という覚悟さえ持てば、不安など問題にならない。

避けるべきは、この自己不信が自分の努力に限界を設けてしまうことだ。自分なりに努力したと思っても、「この辺が限界かな」という枠をつくってしまうことで、より以上の飛躍がない。先に言ったように、君たちの実力は夏よりも伸びているし、潜在的能力はまだまだ発揮されていない。

君たちに言っておく。重要なポイントは「もうこの辺でやめておこう」と思った時、さらに「いや、もう少しだけやっておこう」という気持ちを持てるかだ。もう一押しが必ず実力をつけてくれる。

今月のポイント

①主体的に取り組め
義務ではなく、自分の血肉とするために真剣に徹底的にやること。

②1日に複数教科やること
1つの教科に何時間もかける人がいる。気持ちはわかるが心配な教科(逆に得 意な教科)だけやるのは良くない。入試は総合点で決まる。全体として6~7割 とれれば良い。バランス配分をよく考えよ。

③時間制限を設けよ
1つの教科や1つの問題にばかり時間をかけすぎないこと。本番を想定してこ の問題なら何分ぐらいだなと検討をつけ、その時間でできなければ解答を見るな り先生に聞く。

④妥協するな
眠たい自分、これくらいでいいやという自分、逃げたい自分と決して妥協して はいけない。敵は外側にいるのではない。自分の中にこそいるのだと知れ。

贈る言葉

物事を成し遂げる時、それは必ず孤独の中で行われる。
たとえそれが多勢の協力で成ったと見えても、そこに至る無数の決断、意志、努力は孤独の中で行われる。