ARCSからの子育ての提言
我が子を幸せと成功に導くには、これからの時代、家庭教育が大切となる
いま100年に一度の大転換を迎えている
2030~2040年にかけて「今ある職業の半分は消滅する!」
これが経済界の人々、社会学者や未来学者が一致して予想する近未来像です。
これはご存知のようにAIやテクノロジーの発達により、多くの労働が人間から機械に取って代わられるからです。
そのような社会で人間はどうなるのでしょう。
もちろん人間のすべきことがなくなるわけではありません。
しかしそれは今までのように、多くの人が組織に属し集団で活動する形態から、個々人のユニークな能力を発揮することで他者や社会に貢献する形へと変わるでしょう。
要するに個人の力量が問われる時代ということです。
新しい価値観とは
ここで新時代の価値観を以下の図を使って古い時代と比べてみたいと思います。
さらに新時代の変化の特徴をまとめると次のようになるでしょう。
- 世界の価値観大転換の時代 物質至上主義的価値観から精神の(心の)時代へ
- 組織依存(集団主義)から個人の能力発揮へ
- ピラミッド型からフラットへ
- 平均型から二極化へ
- 食べるための仕事から自己実現
このように時代の価値観が変わるために、人間のあり方もまた変化せざるを得ません。
簡単に言うとこうなります。
- 皆と同じ → 一人ひとり違う能力発揮 (個人的能力重視)
- Having → Being (物質的な所有より自分らしく在ることが大切)
- 他人軸 → 自分軸 (他者に依存した生き方から独自の価値観で生きる)
どんな子どもに育てればよいか
具体的にこれからの時代に活躍する人間はどんな子どもなのでしょうか。
これも箇条書きにすると以下のようになります。
- 平均的な学力より得意科目や得意分野を深く追求する
- 教わったことを鵜呑みにせずクリティカル(批判的)に判断できる
- 教科書的な領域だけでなく、社会現象や自然、文化や芸術など幅広い分野に興味がある
- 新しいことにチャレンジするとともに自分を向上させる意欲に富む
伸びる子どもの親とは
さて、ご家庭で親にできることは何でしょう。
親は子供の学力より人間力を育てることに力を注ぐべきだということをお伝えしたい。
子どもの自主性を奪わず主体的に考え行動することに重きを置きましょう。
コミュニケーションの機会を増加し、長所や隠れた才能に目をやり自尊心を育むことは、これまで以上に重要です。
その上で幼い頃から物事に知的好奇心を持つよう配慮しましょう。
しかし、もっとも大切なことは親自身のあり方です。日頃の親の考え方、ふるまい、言動が子どもの心身に大きく影響することはこれまでも当たり前の事実として知られてきましたが、これからの時代、子どもの将来をますます左右する重大要素となってくるでしょう。
私たちは過去数千人の親子と直接触れ合ってきました。
数々の親子問題に関わった経験、そして新しい時代の要請を考慮した結果「子どもを伸ばす親の共通ポイント」を発見しています。
- コントロール欲求を抑え無条件の愛で子を信頼している
(思い通りにしようとせず、子どもの成長を愛しく見守る) - 子どもが良くなることを望むが目先のことに一喜一憂しない
(良い成績をとって欲しいとは願うが、そうなってもならなくても良いと気持ちをゆるめる) - 親自身の人生が充実し幸福感を感じている
(親が本来の自分と調和して生きることで子どもも安心して自分を解き放つ) - 子どもに介入すべき範囲と介入できない範囲を明確にしている
(子どもを必要以上に心配せず、自由に行動させる勇気がある) - 子どもの人格を認め対等な人間同士という意識が高い
(子どもを所有物と考えず、対等だからこそ自分の考えや気持ちも子どもに隠さない)
以上、5つのポイントをあげましたが、私たちが特に重視しているのは3の親自身の人生が充実し幸福感を感じていることです。
なぜなら、これが実現していれば、あとの4つはおのずとうまくできるようになるからです。
母親の幸福感が子どもの学力にも影響する
ところで、子どもにとって家庭環境が大事なのは言うまでもありません。何よりも親が心の安定を保ち子どもに無条件の愛を注ぐ暖かい家庭であることは理想です。
とりわけ母親が幸福であることが子どもの心身の発達、ひいては学力向上にも大きな影響を与えることは間違いありません。
この点について少し掘り下げてお話したいと思います。
子どもの学力といえば、いま教育界において非認知能力という新たな能力が注目されています。
テストやIQなど数値化できる認知能力と違って、非認知能力とはたとえば自制心やグリッド(やり抜く力)、粘り強さなど子どもの認知に関係する能力であり、アメリカなどの調査ではこれらの能力のほうが大学で好成績をおさめたり、その後の社会的地位や経済的豊かさ、つまり成功につながるものであることが証明されています。
そしてこの非認知能力は環境の影響を受けることがわかっています。
「内発的動機づけ」の重要性で有名なアメリカの心理学者エドワード・デジとリチャード・ライアンによれば、子どもの学習意欲が向上するためには「自律性」「有能感」「関係性(人とのつながり)」が必要であり、この3つを促進する環境を周囲の大人が作り出せるかがカギとなると言っています。
これらの3つの要素こそは、子どもの非認知能力に欠かせない心のあり方(マインドセット)であり、親の影響を大きく受けるものなのです。
では親はどうすればよいのでしょうか。
親は子どもの本当の学力―自らの意志と行動によって困難に打ち勝ち将来の社会的成功を得る能力―をどう育てればよいのでしょうか。
私たちの提案は以下の通りです。
まず、子どもに何事も自分の意思で選んでやっているという実感をもたせ、管理強制されていると感じさせないこと。やり遂げるだけの力があると思わせること。そして親から信頼され価値を認められ尊重されていると感じさせることです。
今までのように「目先の点数」にこだわったり、ひたすら「将来困らないように勉強しなさい」と強制することではないのです。それはむしろ逆効果なのです。
特にこれからの「個人の実力」が問われる時代は、単純な点数ではなくむしろ非認知的スキルの伸展こそが大切なのだといえます。
そして最も大事なポイントは、親―特に母親―が自らの人生に充実と幸福を感じていることにあります。
なぜなら「自立性」「有能感」「関係性」は言葉(顕在意識)で意図的に教えられるものではなく、むしろ親の日ごろの無意識的なあり方(being)のほうが子どもの潜在意識にダイレクトに伝わるからです。
つまり親が心から充実感と幸福感に満たされているとき、その感覚感情こそが強烈なメッセージとなって子どもの姿勢もポジティブで前向きなものに転換するということです。
まさに親―特に母親―の幸福こそが健全な子育てへの第1歩といえるでしょう。